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研究者・企業のトラブル

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 研究者と企業による「産学連携」で、知的財産を巡るトラブルが起きている。がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許料収入を巡る本庶佑・京都大特別教授と小野薬品工業との争いは11月に和解したものの、契約に関する支援体制作りなど構造的な問題は残されたままだ。それぞれの立場から見た課題と解決の方向性を聞いた。

特許が医療研究の弊害に 高橋政代・ビジョンケア社長

 研究者兼臨床医として、再生医療を使って網膜などの治療法確立を目指している。製薬企業との共同研究で開発を進めてきたが、方向性の違いから、別々に開発を進めている。しかし、私が発明者の一人として取得した特許を使うことができない。企業側は協議にすら応じてくれていない。他の研究者に聞くと、企業との間で特許を巡るトラブルを抱え、守秘義務から周りに相談できず泣き寝入りしている人も多い。こうした問題を解決しないと、日本のアカデミア(学術界)での産学連携がうまくいかなくなる。現状を訴えるいい機会になるとの思いもあり、2021年7月、特許庁に特許の使用許可を求め裁定請求をした。

 まず問題なのは、契約のあり方だ。研究者が特許を出願したくても、所属機関は資金がないため「費用を出す企業がないと出願しない」と言われる。後にノーベル賞につながるような画期的な研究でも、すぐ使えない「種(たね)」の段階では出願されにくい。国内での産学連携では、出願料を企業が負担することがよくある。ところが、契約内容によっては、企業は特許の権利を実質独占する「約束」を結んだようになってしまう。研究者が…

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