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中島岳志・評 『流域治水がひらく川と人との関係』=嘉田由紀子・編著

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『流域治水がひらく川と人との関係』
『流域治水がひらく川と人との関係』

 (農山漁村文化協会・2420円)

水と住民との近しい関係、取り戻そう

 2020年7月に、熊本県球磨川流域で起きた水害では50人が溺死した。前滋賀県知事で参議院議員の嘉田由紀子は、環境社会学者としての知見をもとに、現地調査を実施。当事者の地元住民と共に溺死者一人ひとりの死亡要因を解明し、被害構造に迫ることで、被災減少政策の提案を行う。本書はその過程で開かれたシンポジウムの記録をもとに、「流域治水」のあり方を提言している。

 嘉田らの調査によると、20人の溺死者を出した人吉市では、球磨川本流の水位上昇前に支流が氾濫し、街中水路が溢(あふ)れることで溺死者が出た。支流上流の山林崩壊により、大量の土砂と木材が流れ込んだのだ。国や県の報告では、支流の氾濫は球磨川からのバックウオーターとされている。バックウオーターとは、支流が増水した本流にせき止められ、水位が上昇する現象である。しかし、今回のケースでは、バックウオーターが起…

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