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日本の刑事司法が、国内外から「人質司法」と批判されて久しい。否認や黙秘を続ける容疑者や被告が身柄を長期間拘束され、権利を侵害されているとの指摘だ。
象徴的なケースが今夏、表面化した。横浜市の化学機械製造会社の社長ら3人が外為法違反容疑で警視庁に逮捕された。長期間勾留された後、起訴が取り消された。
生物兵器に転用可能な装置を不正輸出したとの容疑だった。社長らは無実を主張し続けた。
起訴後に弁護側が保釈を請求したが、東京地検は「会社ぐるみで証拠隠滅を図る可能性が高い」と反対し、東京地裁も請求を退けた。
1人は拘置所で体調を崩し、胃がんと診断されても、保釈を認められなかった。その後に入院し、死亡した。
他の2人は6回目の請求で、ようやく保釈が認められたものの、拘束は332日間に及んだ。
起訴後も長期間、勾留を続ける必要があったのか疑問だ。3人は無実の罪で長く自由を奪われ、会社の信用も傷ついた。
逮捕、起訴した警察や検察と、保釈を認めなかった裁判所の責任は極めて重い。
こうした例が人質司法と批判されてきた。しかし、法務省は身柄拘束には厳格な要件や手続きが定められているとして「批判は当たらない」と強調している。
ただ、日本弁護士連合会は、自白した被告よりも、否認している被告の方が、保釈が認められにくいと指摘している。
自白の強要は憲法で禁じられている。にもかかわらず、自白偏重の強引な取り調べが、多くの冤罪(えんざい)を生んできた。
批判を背景に近年は保釈率が上昇していた。だが、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が海外逃亡した後の昨年は低下した。
保釈中の逃亡に関しては、法制審議会が今年10月、対策を答申した。国外逃亡を防ぐため、全地球測位システム(GPS)で位置情報を把握できるようにすることなどが柱となっている。
捜査や刑事裁判の間は、無罪と推定するのが原則である。身柄拘束は必要最低限であるべきだ。
人質司法の批判に正面から向き合い、刑事司法のあり方を見直す必要がある。