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コロナ禍で私たちの社会は何が変わったのでしょう。その中でどう生きればいいのでしょう。さまざまな人たちの姿から考えます。

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「もう後ろ向かない」コロナ解雇の視覚障害女性を後押しした電話

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はりの施術で、機器を操作して強さ調整する美咲さん。仕事上、触ることが欠かせず、手の感触が頼りだ=福岡市南区で2021年12月23日午前10時20分、津村豊和撮影
はりの施術で、機器を操作して強さ調整する美咲さん。仕事上、触ることが欠かせず、手の感触が頼りだ=福岡市南区で2021年12月23日午前10時20分、津村豊和撮影

 新型コロナウイルスは、障害の有無を問わずさまざまな人に影響を与えた。ただ、それを乗り越えようとする手段は、障害のある人の方が限られている場合が多い。視覚障害を抱えたある女性はコロナ下で仕事を失い、途方に暮れて立ち止まった。その時、希望の芽になったのは、かつての恩師から数年前にもらった1本の電話だった。ゆっくり、でも確実に前へ歩み続ける女性の姿を追った。【蓬田正志/西部報道部】

 冷え込んだ師走の朝、福岡県筑紫野市にある西日本鉄道の朝倉街道駅に、足早の通勤客に交じって、点字ブロックを確認しながら向かう美咲さん(34)の姿があった。手のひらで改札機の位置を確かめてホームへと進む。白杖(はくじょう)の感覚を保てるように手袋は着けないので、冬は手すりが氷のように冷たい。駅員に誘導されて電車に乗り込むと、ほっとした表情を見せた。

 生まれつき目が見えない美咲さんは、地元の特別支援学校で学んだ。幼い頃の夢は保育士だったが、高等部に進学すると先輩のほとんどがあん摩マッサージ指圧師やはり師を目指していた。美咲さんも同じ道を選び、支援学校の中にある資格取得課程の専攻科に進んだ。7年かけてマッサージ師、はり師、きゅう師の資格を取得した。

 25歳で訪問マッサージ会社に正社員として就職。会社に用意してもらった送迎車で高齢の利用者宅に向かい、手で触れて症状を確認する。利用者の中には半身不随や寝たきりの人もいて「楽になったよ」と言われるのがうれしかった。孫のように可愛がられ、人生経験を聞くのも楽しかった。

 仕事を続けるうちに自立したい気持ちも芽生えてきた。同居する両親も60歳に近づき、いつまでも甘えるわけにはいかない。そんなふうに未来を考え始めていた時、…

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