連載

少子化考

世界各地を記者が歩きながら、少子化社会の課題や、子どもを持つ意味、家族の幸せとは何かを考えます。

連載一覧

少子化考

人口減でも成長 マクロ経済学の重鎮、吉川洋さんが描く日本の将来

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
大阪万博でにぎわう会場。後方は「太陽の塔」=1970年3月撮影 
大阪万博でにぎわう会場。後方は「太陽の塔」=1970年3月撮影 

 人口減少に伴い日本経済は縮小するとの見方が少なくない。かつて人口増加とともに起きた高度成長期を逆回転させたようなイメージだ。暗い未来予想を払拭(ふっしょく)するシナリオはないのだろうか。マクロ経済学が専門で政府の経済財政諮問会議議員など要職を務めてきた吉川洋さん(立正大学学長)は、「人口が減っても経済成長は可能」と論じる有識者の代表格だ。吉川さんがどんな将来像を描いているのか、話を聞いた。【聞き手・大久保渉】

重要なのは「労働生産性」

 ――人口が減っても経済成長は可能なのですか。

 ◆悲観論者は「労働力人口が減れば、社会全体の所得が減って消費も落ち込みマイナス成長。頑張っても何とかゼロ成長」と考えるのだと思います。多くの企業が日本国内への設備投資をためらってきたのも同じ発想からでしょう。しかし、経済成長率を決めるのは労働力人口の増減だけではありません。労働者1人当たりでどれくらい多くの経済価値を生み出すかを示す「労働生産性」が重要です。

 例えば高度成長期の日本は平均で年9・6%の勢いで経済成長してきましたが、実は当時の労働力人口の伸び率は年平均1・3%でした。単純計算で経済成長の8・3%は労働生産性の向上によるものだったわけです。

 ――どうすれば労働生産性を向上させられますか。

 ◆一つは企業による積極的な設備投資です。分かりやすく例えると、1人1本ずつシャベルを持って土を掘っていた作業現場にブルドーザーを投入すれば一気に生産効率が上がりますよね。もう一つはイノベーション(技術革新)で、米アップル社が開発したスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」などが代表例です。この20年、残念なことに多くの日本企業は稼いだお金を内部にため込み、イノベーションでも後れを取りました。欧米に比べ生産性が伸びていないと言われるゆえんです。

 ――イノベーションには何が必要でしょうか。

 ◆華やかな事例に目を奪われがちですが、大事なのは「必要は発明の母」の基本に返ることだと思います。電気洗濯機は、主婦が洗濯物を毎日手洗いするのはつらいと聞きつけたエンジニアの発案で生まれました。開発に難しい技術が必要なわけではなく、世の中の需要を丁寧にくみ取った成果です。今でいうなら高齢者用の紙おむつで業績を伸ばした企業が良い例です。少子化で子どもの需要が頭打ちとなり衰退する恐れがありましたが、社会の課題に的確に応えて息を吹き返しました。ハード面で技術革新を起こしたわけではなくコンセプトの勝利です。

 では、現在の社会的課題は何でしょうか。「グリーン(脱炭素対応)」と「シルバー(高齢化対応)」が人類の…

この記事は有料記事です。

残り2061文字(全文3159文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集