頑張れば本当に報われますか?上野千鶴子さんに聞く団塊世代の功罪
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戦後の第1次ベビーブーム期に生まれた団塊世代(1947~49年生まれ)が2022年、後期高齢者になり始める。戦後の日本社会を築き上げてきた団塊世代は、今の日本に何を残したのだろうか。この世代の一人である社会学者で認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長の上野千鶴子・東大名誉教授に聞いた。【聞き手・鈴木直】
楽観な団塊親、悲観のジュニア
――団塊世代として、戦後日本を振り返っていただけますか。
この世代は、戦後の共学教育を受けたのだけれども、大人になって、非常に固定的な性別役割分担のある家庭をつくりました。男たちはホモソーシャル(男性同士のつながり)な企業組織で長時間働き、女たちは無業の主婦になった。高度経済成長期に10代をすごし、30代でバブル景気を迎え、その果実を味わい、持ち家も手に入れた。「いい学校」「いい会社」といった社会的成功や金銭的価値に重きを置く価値観に染まっていくとともに、世の中は時間がたてば確実によくなるという、根拠のない楽観性を持った。
でも、こうした生き方ができたのは、わずかひと世代のことにすぎなかった。団塊ジュニアたちは就職するころがバブル崩壊後の就職氷河期に当たり、その後も長い停滞期が続いている。親世代とは逆に、世の中は時間がたてば確実に悪くなるという悲観性を持つことになった。この世代間の意識のギャップはとても大きいと思います。
――上り坂続きの団塊世代と、下り坂しか知らないジュニア世代という巡り合わせになってしまいました。
団塊世代が上り坂ばかりというわけではありません。バブル崩壊後の経済が最も厳しいころ、団塊世代の男たちの多くは中間管理職で、リストラという一番嫌な仕事をやらされました。それでずいぶんストレスをためこんで、40代から50代にかけて亡くなった男たちがたくさんいました。私は、彼らは「戦死」…
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