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コロナ時代の幸福論 墨書の力、不安を「無」に 書家・芸術家 紫舟さん

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制作に取り組む紫舟さん=永田忠彦さん撮影
制作に取り組む紫舟さん=永田忠彦さん撮影

 都心にあるオフィスビルの一室は、静寂に包まれていた。ピンと背筋が伸びて、凜(りん)としたたたずまい。発する声は明瞭で、場の空気を一瞬にしてぴりりっと引き締める。日本を代表する書家でアーティスト、紫舟さんはこう切り出した。

 「『望みは必ず有る』という作品です。ゆうぼう、とも読めますが、コロナ禍の行方はまだわかりませんから」。新型コロナウイルスの感染拡大は国内では小康状態だが、欧米などではオミクロン株が急拡大の様相である。今年はどんな年になるのか、私は紫舟さんに書き初めを依頼していた。作品は横約50センチ、縦約80センチ。聞けば、柔らかいヤギのあごひげを毛に使った超長峰という全くコシのない筆を和紙の上に走らせたのだという。

 「医療が発達した時代に、コロナ禍がここまで長引くとは予想だにしませんでした」。私を見つめた紫舟さん、さみしげにこう言葉を継いだ。「伝統工芸の担い手が、引退を決めたり、家庭が崩壊してしまったりしたことが身近にあって。先が見えない中で、焦って何らかの答えを出してしまう、そんな人が意外に多い気がして。年始にあえてこの言葉を書いてみたかった。今は耐えようよ、と。自分を勇気づける言葉でもあります」

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