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「危険な盛り土」対策 自治体任せにしないよう

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 内閣府の有識者会議が、盛り土を全国一律に規制する法制度の創設を提言した。静岡県熱海市の土石流災害を受けたものだ。

 危険な盛り土をなくすためには、包括的なルールが欠かせない。政府は早急に取り組むべきだ。

 土砂の流出で住宅などが被害を受ける恐れのある区域を、都道府県知事らが指定する制度を導入する。この区域では、知事らの許可がなければ盛り土ができないようにする。

 自治体は、安全対策が適切に実施されているかどうかを工事期間全体を通してチェックする。規制違反には厳しい罰則も設ける。

 現行では盛り土の目的や場所ごとに、宅地造成等規制法や森林法などが適用される。だが、一定規模未満は対象とならないなど、法の網がかからないケースもある。

 独自の条例で規制している自治体も多いが、内容や罰則には、ばらつきがある。静岡県の場合、20万円以下の罰金にとどまり、懲役刑を盛り込んでいる近隣県とは差があった。

 このため、規制の甘い地域を狙って建設残土などを運び込む業者が後を絶たない。問題は以前から指摘されていたが、政府は必要な法整備をしてこなかった。

 ただし、法律をつくるだけでは、事態は改善しない。実務を担う自治体が適切に対応できなければならない。

 安全対策をきめ細かくチェックし、違反行為に厳格に対処するには、専門人材の確保など体制の充実が不可欠だ。

 十分な対策が講じられず、災害の危険性が高いと判断される場合には、業者に代わって行政が安全措置を取ることも求められる。

 大幅に増える業務を自治体がこなせなければ、新制度は絵に描いた餅となる。政府が技術や予算などの面で手厚く支援すべきだ。

 国土交通省などは全国の盛り土を総点検している。完了した約2万8000カ所のうち1375カ所で、届け出がなかったり災害防止措置が確認できなかったりするなどの不備があったという。

 これほど多くのリスクが見過ごされてきたのは、政府の不作為の結果とも言える。国は自治体と連携し、住民を守る手立てを尽くさなければならない。

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