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戦国武将から文人や科学者まで多くの人を魅了してきたものがある。長野、山梨、静岡の各県に幾多もある泉質の良い温泉とゆったりできる旅館だ。心身の傷を癒やし、次なる挑戦や創作への意欲をかき立ててきた。だがコロナ禍で温泉地は観光客は激減し、苦境に立たされている。湯けむりに誘われ、魅力を再発見する旅に出かけた。
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松崎町は伊豆半島の西南部に位置する小さな港町。壁に平瓦を並べ、目地にしっくいをかまぼこ型に盛り上げた「なまこ壁」の建物が200棟近く残る。冬の強い駿河湾からの西風に備え、防火のため明治中期から大正時代に多く建てられたという。
松崎港の周辺に広がっているのが松崎温泉街だ。1964年に町営温泉事業が開始。5本の源泉から営業用と自家用の計約350戸にほぼ無色無臭の63度の温泉を供給する。
こぢんまりとした温泉街の一角にある旅館「山光荘」は66年8月に開業した。江戸・明治の豪商から分家した初代は造り酒屋だった、と六代目で旅館を創業した96歳の現役おかみ、飯田昌子さんが語る。
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