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中村桂子・評 『がんは裏切る細胞である 進化生物学から治療戦略へ』=アシーナ・アクティピス著、梶山あゆみ・訳

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 (みすず書房・3520円)

自然を理解、生きものとして生きる

 今から半世紀前に、米国で「がん対策法」が発効した時のことは記憶に新しい。当時は不治の病とされていたがんの原因究明と治療法開発への挑戦の始まりである。具体的には、医学に当時急進展していた分子生物学を取り入れ、病原体の可能性があるウイルスの遺伝子解析などを始めたのである。この戦略は成果をあげ、今ではがんの正体はかなり見え、対処法も出てきている。

 ここで明らかになってきたがんの正体は、従来の病気のイメージとは異なる。「がんは私たちの一部であり、その事実は私たちが多細胞生物になったときから今に至るまで変わらない」と著者は言う。その通りだが、評者は「がんを知ることは、生きているとはどういうことかを知ることだ」とより動的に受け止めている。がん研究がヒトゲノム解析の必要性を求めたことからもそれは明らかだ。

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