米陰謀論、日本から発信か 「Qアノン主宰者」?札幌在住
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その男性は、ゆっくりと外階段を下りてきた。昨年12月中旬、底冷えのする札幌の住宅街の一角。迷彩柄の上着姿だった。
目が合った。男性はきびすを返し、下りてきたばかりの階段を一気に駆け上がった。
名前を呼んだ。男性は振り向きもしない。自宅に入ると、インターホンに応答しなかった。
この男性は米国人のロン・ワトキンス氏。極右系陰謀論「Qアノン」の舞台となったインターネット匿名掲示板の管理人だった。一部米メディアでは、投稿していた謎の人物「Q」本人である可能性も報じられている。ワトキンス氏は今秋に米国で実施される中間選挙(4年に1度、米大統領選の中間の年に実施される上下両院議員などの選挙)に立候補を表明している。
2020年の大統領選でその存在が有名になったQアノンだが、改めて注目されたのは21年1月6日に起きたトランプ前米大統領の支持者らによる米連邦議会襲撃事件だった。訴追された700人以上の暴徒にはQアノンの信奉者が含まれ、上半身裸で角付きの毛皮の帽子をかぶった「Qアノン・シャーマン(霊能者)」と呼ばれる男もいた。首都ワシントンの連邦地裁は昨年11月、この男に禁錮3年5月を言い渡している。
札幌に拠点を置くワトキンス氏が「Q」だとすれば、米国の民主主義を脅かした陰謀論は日本から発信された可能性もある。
一貫してQであることを否定
「ロンは一貫してQであることを否定している」。そう説明するのは、同じく札幌在住でワトキンス氏の「選挙マネジャー」を務める米国人SF作家、トニー・ティオラ氏(58)だ。だが「Qアノン主宰者のワトキンス氏が出馬へ」(米CBSニュース)、「Qアノンの象徴が議会選出馬を明言」(AP通信)などと、深い関係を指摘する声は少なくない。
「出馬はショックでした。今後数カ月、彼は(メディアの)見出しをにぎわせることになるでしょう」。そう語るのは、Qアノン現象を追ったドキュメンタリー「Qアノンの正体」の監督で、ワトキンス氏にも長期取材した米国人ジャーナリストのカレン・ホーバック氏だ。
ホーバック氏によれば、ワトキンス氏は日本での事業についてほとんど説明せず、「中国語の翻訳者」と名乗っていたこともあるという。ワトキンス氏が日本メディアの取材を受けない理由については、「あなた(記者)が日本のどこかの政府機関で働いていると考えているのではないか」と推測する。
「彼が何かを信じているとすれば、それは言論の自由と匿名性です。おそらく彼は、これらのツールがどれほど強力であるかを身をもって理解している」
ワトキンス氏とは何者なのか。
「匿名掲示板」が…
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