iPS細胞で世界初の脊髄損傷治療 慶応大チーム実施、経過良好

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iPS細胞を使った脊髄損傷治療のイメージ 拡大
iPS細胞を使った脊髄損傷治療のイメージ

 慶応大は14日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った神経細胞のもととなる細胞を脊髄(せきずい)損傷患者に移植する手術を昨年12月に実施したと発表した。iPS細胞を使った脊髄損傷治療は世界初。術後3週目までの経過は良好という。1年かけて安全性を確かめる。治療法として国の承認を得るための臨床研究計画の1例目で、さらに3人に移植する。研究チームは「実用化までに少なくとも3~5年かかる」との見通しを示した。

 計画は、慶応大の岡野栄之(ひでゆき)教授(生理学)らのチームが2019年に国の承認を受けた。脊髄損傷は脳と体をつなぐ神経の束である脊髄が事故などで傷つき、損傷部位より先の運動機能や感覚がまひする。細胞を移植することで、脳の信号を伝える組織を新たに作ったり、傷ついた神経回路の修復を促したりして運動機能や感覚の回復を目指す。今回は脊髄損傷から2~4週間経過した患者が手術を受けた。

 執刀した中村雅也教授(整形外科)らによると、全身麻酔をかけた患者をうつぶせにし、背中側から脊髄を覆う膜を切開して、神経細胞のもととなる細胞約200万個が入った液体20マイクロリットルを損傷部位に移植した。手術は約4時間で終わったという。

 移植細胞は、京都大で作製された他人由来のiPS細胞を、国立病院機構大阪医療センターで移植用に分化させたものを使用した。

 iPS細胞を使った再生医療は、目の難病や心臓病、神経疾患の治療で臨床応用が進んでいる。従来はiPS細胞から分化して成熟しきった細胞やそれに近い段階の細胞を移植してきたが、今回は体内で神経細胞や神経の働きを補助する細胞へと成熟させ、情報伝達組織として機能させるために未成熟な細胞を使った。未熟過ぎると腫瘍化の恐れがあり、安全性の確認が重要となる。

 今後、術後3カ月間のデータを踏まえ、独立したモニタリング委員会が安全性を評価する。委員会が計画の継続を妥当と判断すれば、チームは2人目以降の手術を実施する。記者会見した岡野教授は「ヒトiPS細胞の樹立から15年でここまで来られた。(時間がかかったのは)忸怩(じくじ)たる思いだ」と語った。【荒木涼子】

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