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鎌田慧の「忘れ得ぬ言葉」

膨大な取材メモの中から、珠玉の一言を拾い上げる。社会問題を追い続けてきた反骨のルポライターが、これまでに出会い、感銘を受けた人々を振り返り、戦後史の一こまを切り取っていく。

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鎌田慧の「忘れ得ぬ言葉」

「かねを惜しむな。時間を惜しむな。いのちを惜しむな」 上野英信 /東京

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 ◆記録文学作家 上野英信

炭鉱労働者の苦難、克明に

 地球が危ない。二酸化炭素(CO2)がふえて地球の温室化が、自然災害を誘発している。いま脱炭素が、世界の国々の緊急の課題になった。その元凶として石炭がやり玉にあげられている。たしかにそうだ。しかし、それでも、地底にもぐりこんで石炭を掘りだしていた、炭鉱労働者たちの苦難の歴史が、捨てられたボタ(粗悪な石炭)のように、見むきもされなくなるのは悲しい。

 京都の大学で中国文学を学んでいた上野英信が、卒然と中退してみずから筑豊炭鉱の坑夫となり、彼らの悲惨な生と死を書きつづけた。「なぜ性こりもなく書きつづけてこなければならなかったのか…私以外にだれひとりとして書く者がいなかったからだ」(『追われゆく坑夫たち』岩波新書、あとがき)。だれにも知られないまま消えてゆく坑夫たちの血痕を、せめて1日なりとも1年なりとも長く保存しておきたい、というひそかな決意と…

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