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『僕は失くした恋しか歌えない』=手塚マキ

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『僕は失くした恋しか歌えない』
『僕は失くした恋しか歌えない』

 御曹司、ゲイという枕詞(まくらことば)で語られがちな著者のほぼ自伝小説『僕は失(な)くした恋しか歌えない』(小佐野彈(だん)著・新潮社・1925円)。これまでの著者の文学的な作風とは異なるエンタメ小説だ。ページがすいすい進む。しかし合間に短歌が挟まれていて、そこで一旦立ち止まる。短歌が著者の喜びを昇華させ、風景の色や匂いを醸し出す。そう、これは現代版伊勢物語なのだ。

 浮世離れしたドラマチックなことが著者には次々と起こる。しかし焦点はそこではない。日常の些細(ささい)な言葉のやりとり、気持ちの行き違い、そういうところに二元論では語れないグラデーションの心の機微が描かれている。それを更に引き立てるのが短歌だ。

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