「月で野菜を作る」 始動した夢のプロジェクト、中心人物の思い
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誰もが月で長期滞在できる未来――。そんな夢のような“宇宙時代”の到来を見据え、世界に先駆けた政府プロジェクトが間もなく本格始動する。宇宙の極限環境でも生活の質(QOL)を重視しつつ、生きるために必須の食料を持続的に生産する技術の開発を目指す野心的な内容だ。プロジェクトが目指す未来とはどういうものなのか。中心人物を直撃した。
39歳の開発責任者
「私の根底にあるのは生命の起源への強い好奇心です。なんとか突き止めることに貢献できないかという思いで、大学院時代はバイオインフォマティクス(生命情報科学)の研究をしていました」
こう語るのは、プロジェクトの研究開発責任者である一般社団法人「SPACE FOODSPHERE(スペースフードスフィア)」の小正(こまさ)瑞季代表理事(39)だ。金融機関勤務を経て、2015年に研究開発型ベンチャー支援ファンドに参画。月面輸送船や小型レーダー衛星の開発など宇宙への将来的な展開に貢献しうる数多くのベンチャーに投資してきた。
「生命の起源を探るには地球上だけでなく宇宙での科学的探査も必要です。その加速化のために新興技術の発展が不可欠でした」
「食」だけはまったく違う
宇宙とかかわるベンチャー支援を通じ、気付いたこともある。宇宙関連でも、「食」だけは他の科学分野とは事情がまったく違うということだ。
「ロボットや宇宙船は単体で開発すればいいですが、食はそうはいきません。実際に人が宇宙で居住するとなれば、(制約の多い宇宙空間でも)食べ物や水を確保し、なおかつ精神的に病まずにポジティブに暮らし続ける環境が必要です。そうい…
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