システム障害を繰り返してきた、みずほフィナンシャルグループ(FG)が経営陣を刷新した。
銀行は、重要な社会インフラだ。システム障害を起こせば、影響は顧客だけでなくその取引先にも及ぶ。社会的責任を改めて自覚し、出直しを図る必要がある。
2002年と11年に大規模障害を起こしたにもかかわらず、再発を防げなかった。顧客対応も後手に回り、混乱に拍車をかけた。
過去の教訓を生かせず、顧客目線を欠いた対応に終始した。金融庁は要因として「言うべきことを言わない、言われたことしかしない」という企業体質を指摘した。
抜本的な体質改革が、最優先課題だ。新たにFG社長に就く木原正裕執行役は「深い反省のもと、不退転の決意で臨む」と述べた。
しかし、懸念は拭えない。新体制は、旧日本興業、旧富士、旧第一勧業というみずほの母体となった3行の出身者がポストを分け合う形になった。
みずほは、20年前の発足以来、人事や組織運営で3行のバランスに腐心してきた。その結果、ガバナンス(企業統治)が十分に働かなかったのではないか。
グループトップの社長に、3代続けて旧興銀出身者が就いたことを疑問視する声もある。大企業との取引が中心だった旧興銀は、個人客への感度が低くなりがちだったからだ。
改革への決意を示すなら、社外の人材をトップに起用する選択肢もあったはずだ。しかし、新体制は旧来の枠を出ていない。
歴代経営陣を選んだ社外取締役の責任も、あいまいなままだ。金融庁は昨年11月の業務改善命令で、トップの人選を担ってきた取締役会の責任も指摘した。
人選は、社外取締役が主導している。失策を重ねた旧経営陣を選んだ責任を明確にしないままでは、新経営陣の正当性が疑われる。
再発防止策も力不足だ。企業風土の改善策は、経営陣と社員との対話の機会を増やすといった小粒なものにとどまった。
みずほは、システム障害のたびにトップが代わり再発防止を誓ってきた。だが、体質を改められず同じトラブルを繰り返した。新体制が身内の論理にとどまっていては、信頼回復の道のりは遠い。