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戦国武将から文人や科学者まで多くの人を魅了してきたものがある。長野、山梨、静岡の各県に幾多もある泉質の良い温泉とゆったりできる旅館だ。心身の傷を癒やし、次なる挑戦や創作への意欲をかき立ててきた。だがコロナ禍で温泉地は観光客は激減し、苦境に立たされている。湯けむりに誘われ、魅力を再発見する旅に出かけた。
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温泉の湯けむりに誘われて執筆に当たった文人たちと同様に、芸術家の岡本太郎さんも野沢温泉を愛した。作品を作り上げてはその疲れを癒やしに訪れ、スキーや道祖神祭りに熱中すると同時に、祭りに参加する家を訪れて書を残すなど村民と触れ合った。
定宿だったさかや旅館(野沢温泉村豊郷)の会長、森行成さん(79)は、村が岡本さんに作品を依頼する前から縁があった。共同通信で記者をしていた時、1972年の札幌オリンピックのメダルをデザインするなどしていた岡本さんを何度か取材していたのだ。
スキーで有名なオーストリア・サンアントンと姉妹村提携し、その記念碑を作ることになり、村を訪れた岡本さんと顔を合わすと「君はなぜ、ここにいる?」。森さんは村長になった義父、森敏雄さんの経営していた旅館に入り、村に移住していた。そこから岡本さんとの私的な交流が始まった。
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