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トランスジェンダーが抱える母との溝 「親の意向優先しないで」

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東京地裁、東京高裁などが入る庁舎=東京都千代田区霞が関1で
東京地裁、東京高裁などが入る庁舎=東京都千代田区霞が関1で

 自認する性が戸籍の性と異なるトランスジェンダーが、精神安定のために持っていたホルモン剤を、親の意向で廃棄することは許されるのか――。性的少数者とその親のあつれきが、こうした争点の訴訟に発展した。和解で終わったが、当事者らを取材すると、親との溝に苦悩する性的少数者の現状が浮かび上がった。

「女の子らしくしなさい」と叱られ

 千葉県在住の原告(36)は、女性として生まれたが、自認する性は男性。3歳のころから、女の子として扱われることに違和感があった。「新幹線の運転士になりたい」「スカートでなくズボンをはきたい」と言うと、母親から「女の子らしくしなさい」と叱られた。母親の「期待」に沿うように演じる努力をしたが、13歳のころから、うつの症状に苦しめられた。

 25歳だった2011年、男性ホルモン剤を注射するようになった。ホルモン剤は更年期障害などの治療に使われることが多いが、トランスジェンダーにとっては、男性ホルモン剤は筋肉量や体毛が増え、女性ホルモン剤は乳房が膨らむなど、自認する性の特徴に体を近づける効果がある。症状は落ち着き、精神バランスが保てるようになった。

 実家から離れて暮らしていたが、この頃、母親に性自認が男性であることをカミングアウトした。「性的少数者は人口の5%程度いる」と説明したが、母親は「そんなわけはない」と聞く耳を持たなかった。

 母親との関係は元々良くなかったが、さらに疎遠になった。父親は09年に脳卒中で倒れた影響で会話が難しい。「一人は孤独。ともに困難を乗り越える家族がほしい」と子供を望んだ。精子バンクを使って人工授精し、16年9月に長女を出産した。

トランスジェンダーへの理解求め提訴

 出産後、シングルマザーらを支援する福祉施設(東京都新宿区)に入所した。妊娠中は控えていた…

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