新型コロナウイルスのオミクロン株による感染者急増を受け、政府は外来診療の新方針を示した。
まん延防止等重点措置の対象が34都道府県に広がる中、検査や受診が滞る地域が出ているためだ。岸田文雄首相は「先手の対応」を強調してきたが、後手に回ったと言わざるを得ない。
容体の急変に対処できるよう、自宅療養者のサポートに万全を期さなければならない。
新方針は、外来診療の負担が増している地域で、症状が軽く重症化リスクが低い人が対象となる。
受診する前に自分で検査するよう呼び掛ける。さらに外来の逼迫(ひっぱく)が想定される場合には、自己検査で陽性と判明すれば受診なしでも自治体による健康観察を受けることを可能にする。
患者の対応の入り口となる外来診療の目詰まりを防ぎ、症状が重い人のために医療資源を効果的に活用する狙いがある。
ただ、適切に運用できるのか。懸念は拭えない。
まず、自己検査の抗原検査キットの供給不安だ。メーカーに大量の発注が寄せられ、生産が追いつかないという。必要な人が入手できる仕組みが求められる。
陽性者のケアも課題となる。重症化リスクがあるかどうかを患者や家族が判断することは難しい。政府は「希望する人は受診できる」というが、過去には受診基準が厳格に適用された結果、治療の遅れを招いた例もある。同様の事態を繰り返してはならない。
自宅療養に軸足を移すのであれば、そのための医療環境を整えることが前提だ。
外来でコロナ患者を受け入れていない医療機関でも、オンライン診療なら感染リスクを避けることができる。自治体は地域の医師会と連携し、協力する診療所を増やすべきだ。
感染力の強いオミクロン株の流行で、コロナ対策は転換を迫られている。従来のような枠組みでは感染者の急増に対処しきれず、症状に応じたケアの必要性が高まっている。
臨機応変な対応が不可欠だが、実効性が確保されなければ不安や混乱を招く。政府は対策の要点を明確にし、国民の理解と協力を得る努力を尽くさねばならない。