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2022年度国公立大入試出願状況

2022年度国公立大入試出願状況(2月4日午後3時現在、文科省集計)をまとめたページです。

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「吃音のことも考えて」 英語スピーキングテストに高まる懸念

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都立高の入試に臨む受験生たち(写真と本文は関係ありません)
都立高の入試に臨む受験生たち(写真と本文は関係ありません)

 「もし吃音(きつおん)の症状が原因で高校入試が不利になってしまったら……」。吃音のある中学生や吃音のある子の保護者らの間で、そんな不安が広がっている。理由は、来年春の東京都立高入試に導入される英語のスピーキングテストだ。「話す」こと自体の得意不得意と、英語の能力は本来別物のはずだ。吃音の困難を抱える生徒たちの声を聞いた。【塩田彩/デジタル報道センター】

 ビデオ通話をつないだパソコンの画面越し。学生服姿の男子生徒(13)は、時折言葉に詰まりながら自分の症状を丁寧に説明してくれた。「ジェスチャーを付けてからだと言葉がでやすいから、こうやってから……『ありがとう』って言ったり」。そう言いながら軽く右手を挙げる。

 普段は身ぶりを交えたり言いにくい言葉をとっさに言い換えたりして会話している。しかし、授業では、教師や大勢の同級生の前で、吃音が出てしまったらと思うと、たとえ正解が分かっても手を挙げることができないという。東京都内の公立中学2年生。3年生になる来年度、都立高校の入試に必須のスピーキングテストを受ける予定だ。「話す文章が長くなればなるほど、不利になると思う。何カ所も詰まってしまったらって考えると……ちょっときつい」。男子生徒は不安を口にした。

多くがからかいやいじめを体験

 吃音とは、なめらかに話すことが難しい発話障害の一つだ。「お、お、お、おはよう」など、最初の音を何度もくり返す「連発」や「……おはよう」など、音に詰まる「難発」などの症状がある。吃音のある人は約100人に1人程度いるとみられ、田中角栄元首相や米国のバイデン大統領も吃音に悩まされたと言われている。

 ほとんどは幼少期に発症し、7~8割は自然に症状が消えるが、2~3割程度は大人になっても症状が残ると見られている。吃音の発症は、その人の体質や、幼少期に言語や認知能力が急激に発達する際の影響が大きな要因と考えられているが、親のしっせきやしつけのせいだとする誤った偏見も根強く、当事者だけでなく家族も追い詰められることがある。

 吃音のある人たちが直面するのは症状そのものだけではない。うまく話すことができないことから、からかいやいじめの対象になったり周囲から必要以上に注目されたりする体験を重ね、話すことが恥ずかしく、強い不安を感じるようになる人もいる。

 同級生から話し方に由来するあだ名を付けられた、サークルの自己紹介で数分間沈黙が続きサークルに顔を出せなくなった、アルバイト先で流ちょうに受け答えができず客からしっせきされた……。記者の知る吃音のある人たちの多くが、忘れたくても忘れられない記憶にさいなまれていた。単語をとっさに言い換えたり、話すこと自体を控えたりして必死に症状を隠している人も少なくなかった。シドニー大学の研究者らによる調査によると、成人期の吃音のある人の4割以上が、人と接する場面に強い不安や恐怖を抱く「社交不安症」を抱えている。

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