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米利上げと世界経済 混乱回避へ周到な対応を

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 新型コロナウイルス禍から回復途上にある世界経済を混乱させないよう、周到なかじ取りが求められる。

 米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、金利を事実上ゼロに抑えてきた政策を3月にも終わらせて、利上げに踏み切る意向を表明した。コロナ危機に対応した異例の金融緩和策からの転換を本格化させる。

 米国の景気は、大規模な経済対策に支えられて、消費が活発化した。原油高も重なり、物価上昇率は年7%と39年ぶりの高水準になった。利上げは、インフレを抑制する狙いがある。

 ゼロ金利の長期化は景気を過熱させ、株式や不動産のバブルを引き起こす弊害も伴う。経済の回復に合わせて、政策も正常化させることが必要だ。

 懸念されるのは、急激なインフレを抑えようとするあまり、金融引き締めが行き過ぎて、経済を失速させることだ。

 米国の景気が悪化すると、脆弱(ぜいじゃく)な世界経済を揺さぶる。国際通貨基金(IMF)は既に、オミクロン株の感染拡大を受けて、今年の世界の成長率見通しを昨年の実績から大幅に引き下げている。

 米国の金利が急上昇すれば、世界経済を支える新興国にも打撃が及びかねない。投じられた資金が高金利の米国に大量に流出する可能性があるからだ。

 ドルへの資金集中で、米国以外の国は通貨が安くなり、インフレが進むという問題も出てくる。

 米国のバイデン政権は、中間選挙を控え、国民の不満が強いインフレへの対策を最優先課題の一つに据えている。だが世界経済を安定させることも超大国の責任だ。

 株式市場では利上げへの警戒感が強まり、日米の株価が急落した。投資家が今後の引き締めペースを読めず、疑心暗鬼に陥った。

 不安定な相場は投資家や企業の心理を冷やし、景気を悪化させる。FRBは内外の経済に目配りしたうえで明確な方針を示し、市場と丁寧な対話を重ねてほしい。

 日銀は、米国の利上げの影響を精査する必要がある。異次元緩和を続けているため、円安が進みやすい状況になっている。物価上昇の加速に備え、金融政策のあり方を巡る議論を深めておくべきだ。

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