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「あいだ」に本が生まれる――。対談にしろ往復書簡にしろ、人間と人間とが出会った時、火花がぱっと飛ぶみたいに「あいだ」に湧き上がる何か。その尊さ、力強さがにじむような本が好きだ。
月刊誌「婦人之友」に書評を書かせてもらうことになり、2月号に、<「あいだ」の本>というコンセプトで2冊を紹介した。
「アイヌの世界に生きる」(茅辺かのうさん著)は、明治末から昭和の時代にアイヌとして育った女性の人生の聞き書き。著者は自己変革を求め、北海道の季節労働の現場に身を投じた女性だ。もう一冊は2019年に亡くなった哲学者、宮野真生子さんと、人類学者、磯野真穂さんとの往復書簡「急に具合が悪くなる」。どちらも2人の女性の奇跡のような出会いから生まれた本で、読み返すたび、新しい発見に満ちている。
「『あいだ』の本」というジャンルがあるなら、臨床心理士の信田さよ子さんと、沖縄で社会調査を続ける教育学者の上間陽子さんの対談集「言葉を失ったあとで」も推したい。現場で人の話を聞くプロの2人が、「聞く」について深く、具体的に語り合っている。
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