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北京冬季五輪あす開幕 調和の精神に立ち返る時

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 北京冬季オリンピックがあす開幕する。新型コロナウイルス禍に加え、米中対立が深刻化する中での大会である。

 北京では2008年夏季大会に続く五輪となる。1924年に冬季大会が始まって以来、夏冬の五輪を同じ都市で開催するのは史上初めてだ。

 世界第2位の経済大国に成長した中国は、2度目の五輪を国際的地位を固める場にしようとしている。習近平国家主席は「中華民族の偉大な復興への自信を強める」と述べ、独自の政治体制の優位性を強調した。

 国威発揚につなげようとする中国の思惑が前面に出る大会とならないか、気掛かりだ。

影を落とす大国の対立

 国際社会の分断も大会に影を落としている。

 米英などは中国の人権状況を厳しく非難している。新疆ウイグル自治区の少数民族に対する抑圧を理由に、大会に政府関係者を送らない「外交的ボイコット」を表明した。日本も政府高官の派遣を見送り、国会は中国の人権状況に懸念を示す決議を採択した。

 一方で、ロシアのプーチン大統領は開会式に出席し、習主席と会談する。ロシアはウクライナをめぐって欧米とにらみ合い、中国に接近している。五輪にも欧米と中露の対立が持ち込まれた形だ。

 過去の大会に際しては、五輪期間中は紛争地でも戦闘を停止するとの休戦決議が国連総会で採択されてきた。だが今回は中国を含む173の共同提案国に日米豪印などが加わらず、足並みが乱れた。

 台湾選手団の呼称をめぐっても混乱が起きた。これまで使われてきた「中華台北」で参加予定だが、中国の報道官が「中国台北」と呼んだことを受け、台湾選手団が一時、開閉会式の欠席を発表する一幕もあった。

 北京五輪を取り巻く現状は、「平和の祭典」の理念に沿っているとは言いがたい。五輪憲章は「人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てる」ことを根本原則に掲げる。関係国は改めて原点を思い起こし、五輪を政治利用しないよう留意しなければならない。

 コロナの感染拡大防止のために、昨夏の東京五輪以上に厳しい対策が取られる。選手や関係者だけではなく、報道陣も外部との接触が遮断される「バブル」の環境で行動を制限される。

 「ゼロコロナ」政策を掲げる中国だが、既に関係者からは多くの感染が確認されている。大会中も対策に万全を期すのは当然だ。

 ただ、行き過ぎた統制や監視は自制すべきだ。五輪関係者の健康状態を管理するアプリによって、情報を抜き取られるのではないか、との不安が出ている。私有のスマートフォンやパソコンを持参しない選手団もある。

人権を尊ぶ大会運営に

 人権尊重は五輪の根幹をなす考えだ。

 国際オリンピック委員会(IOC)は昨年、政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じた規定を一部緩和した。特定の個人や国を標的にしないことが条件だ。

 これを受けて、東京五輪では選手たちが競技場での行動やネット交流サービス(SNS)での発信を通じ、人種差別や国家による圧力に抗議の声を上げた。

 だが、今大会の組織委員会は中国の法律や規制に従わなければ、処罰の対象になると表明した。これに対し、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は「中国の法律はあいまいで、自由な発言は取り締まりの対象になる」と懸念を示している。

 処罰をちらつかせるような高圧的な運営が世界に理解されるとは思えない。各国の若者が自由に言葉を交わし、交流を深められる環境が必要だ。アスリートの意思表示が不当に封じられるようなことがあってはならない。

 IOCには選手の安全を守り、競技に専念できる舞台を整える責任がある。

 中国の女子テニス選手、彭帥(ほうすい)さんが共産党幹部に性的関係を強要されたとSNSに投稿し、削除された問題も尾を引いている。IOCのバッハ会長がオンラインで彭帥さんと面会したが、詳しい経緯は明らかにされていない。不信を拭う説明が求められる。

 人種、宗教、性別、国籍などの垣根を越え、世界の人々がスポーツの喜びを共有する。そんな祝祭を実現するために、参加国は「調和の精神」に立ち返るべきだ。

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