男女平等の国・フィンランドでなぜ出生率が下がったのか
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一般に先進国では男女格差が縮まるほど出生率が上がると言われてきた。女性が子育てしながら働き続けられれば、出産意欲も高まるという論理だ。だが、子育て支援が充実し、男女平等社会の模範的存在とも言えるフィンランドで異変が起きている。
12月のヘルシンキは日が短い。午後4時を過ぎれば、窓の外は真っ暗だ。
レーナ・エーロライネンさん(37)がリビングで生後3カ月の長男エリアちゃんをあやしていると、玄関の向こうから歓声が聞こえてきた。長女のリンネアちゃん(4)が保育園から戻ってきた合図だ。この日は夫のビルホ・ユッシラさん(42)が在宅勤務後に迎えに行った。
家族4人がソファの周りに集まり、だんらんの時間が始まった。
「子供は女性だけのプロジェクトではないし、キャリアは男性だけのプロジェクトではありません」。にぎやかな声が響く部屋で、レーナさんはそんなふうに言った。
日本企業の北欧進出を支援するコンサルティング会社でマネジャーを務める。顧客のプロジェクトを成功に導く要職だ。前職は日本の社会や文化を専門とする研究者。流ちょうな日本語を話す。
取材した2021年冬、レーナさんは産後休暇中だったが、育児休暇に入る22年1月に職場に復帰した。フィンランドでは母親と父親がそれぞれ仕事をパートタイムにして育休をシェアできる。レーナさんの場合は、週3日はビルホさん、2日はレーナさんが働く。「女性が母親になってからキャリアを続けるには、結婚相手の協力が必要です。フィンランドに、そういうことをしてくれる男性が多いのは確かですね」
男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」(世界経済フォーラム=WEF、21年3月発表)によると、フィンランドは世界で2番目に格差の小さい国だ。「男女平等」は子育てでも進んでいる。
フィンランドは国の政策で父親の育児参加を促してきた。父親の育休(最大約2カ月半、有給)取得率は約8割。22年8月からは制度をさらに改革し、母親と父親のそれぞれが約7カ月ずつ有給の育休を取得できるようになる。
出産や育児を支援する「ネウボラ」と呼ばれる制度もある。保健師や助産師らプロの担当者が家族全体の心身をサポートする。国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」の「お母さんにやさしい国ランキング」で、フィンランドはたびたび第1位となっている。
だが、このフィンランドで、出生率は低下している。
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