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米高速炉開発への協力 サイクル延命なら問題だ

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 「次世代の原子炉」として米国で計画されている高速炉の開発に、日本が協力することになった。

 高速炉は、燃料に中性子を高速でぶつけることによって、効率よく燃やす仕組みだ。ビル・ゲイツ氏らが設立したベンチャー企業「テラパワー」が手がけ、日本原子力研究開発機構、三菱重工業などが参加する。

 トラブルが相次ぎ廃炉が決まった日本の高速増殖原型炉「もんじゅ」と同じように、冷却に液体ナトリウムを使う。そのため、米側が協力を要請してきたという。

 日本は、1兆円以上の国費を投入したもんじゅで得たデータや技術を提供する。米側は、日本にある施設で実験に取り組むことができ、新たな知見は両国で共有する方針だ。

 政府は、もんじゅが頓挫した後も、高速炉を核燃料サイクルの柱に位置付ける政策を維持している。開発のためのロードマップを策定し、海外との連携による技術の向上を探ってきた。

 しかし、今回の協力には疑問が多い。

 日本のサイクル政策は、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用するのが狙いだ。ところが、テラパワーが使うのは濃縮ウランで、燃料のリサイクルは想定されていない。

 そもそもサイクル政策は行き詰まっている。

 高速炉は、開発や発電のコストが高く、多くの先進国が計画をあきらめてきた。日本が協力したフランスの高速増殖実証炉計画も凍結されている。

 めどが立たない中、政府はプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を既存の原発で使う「プルサーマル」を推進してきた。

 しかし、東京電力福島第1原発事故後に再稼働した原発のうち、プルサーマルに対応できるのは4基しかない。

 今回の協力で得た知見を高速炉の開発に生かせたとしても、政府のロードマップが想定する本格的な利用開始は今世紀後半だ。

 これでは、サイクル政策の延命策と受け取られても仕方がない。岸田文雄政権がまず取り組むべきなのは、現実味の乏しいサイクル政策を検証し、見直しを進めることだ。

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