傘に自画像、牛のひづめ お忘れ物総合取扱所の「カオス」
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「東京メトロにも、変わった落とし物って届くんですか?」「ええ、それはまあいろいろと……」。広報担当者との雑談でこう聞いて、実際にのぞきに行きたくなった。東京メトロ裏側探検隊第4回の目的地は、飯田橋駅構内にある「お忘れ物総合取扱所」。特別にバックヤードを見せてもらうと、出てくる出てくる驚きの忘れ物の数々。「どうしてこんなものを忘れるのだろうか?!」【北山夏帆】
私もよく忘れ物をしてしまう。ここ「お忘れ物総合取扱所」にも前に傘を受け取りに来たことがあった。今回の案内人は取扱所の鴇田(ときた)純一助役(44)と1級駅務係の瀬尾恭美さん(33)だ。苦笑いされそうだが、正直に「実は、何度かお世話になっております」と頭を下げた。すると瀬尾さんは「とんでもない、取りに来てくださるのは本当にありがたいことなんです。その訳を、ご覧に入れます」と受付の奥にあるドアをスライドした。
傘の山
年間約36万2000件(2020年度)の遺失物が届くという同所。「せっかくなので、まずは傘のコーナーをご紹介しましょう」。棚が並ぶバックヤードの通路を奥へ進むとすぐに見えてきた。
「傘の忘れ物が一番多いですね。ざっと1000本近くあります」。「忘れすぎですね!?」。自分を棚に上げるとはまさにこのことだが、目の前の棚に積み上げられた傘に感想がもれてしまった。「ついさきほど500本ほど警察に移送されたので、これでも普段の半分ほどです」
落とし物の保管期間は意外と短く、飯田橋駅に保管されているのは直近3~4日間分の忘れ物だと事前に聞かされていた。忘れ物は届けられた駅で当日は保管され、翌日には飯田橋駅の取扱所に集められる。数日保管された後、警視庁の遺失物センターに移送され3カ月置かれた後に処分されるという。実に、もったいない。
棚をよく見ると、拾得した日付や路線ごとに整理して並べられている。乗客が取りに来た際、職員が探しやすいよう工夫しているという。メトロによると、19年度には傘だけで約8万2000本、コロナ禍で利用客が減った20年度でも約5万3000本が届けられたという。20年度でも平均すると、1日約150本が忘れ物として届く計算になる。これは驚きだ。
「他にも夏にはハンカチ、冬は手袋などが多く届きますね。どんなに小さな忘れ物でも持ち主につながる情報がないか探します。一人でも多く忘れ物を取りに来てくれるとうれしいです」と瀬尾さん。
珍しい物の宝庫
他の忘れ物を見せてもらうことに。ざっと棚を眺めるだけでも、大きなぬいぐるみやヨガマットなど…
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