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「10増10減」への異論 あきれる自民の身勝手さ

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 「1票の格差」是正を目的とする衆院小選挙区の区割り見直し案に、自民党から反対意見が噴出している。

 自民が主導して関連法が2016年に改正され、人口比を議席配分に反映しやすくする「アダムズ方式」の導入が決まった。

 昨年11月に公表された20年国勢調査の確定値に基づけば、「10増10減」となる。議席数が、首都圏と愛知の1都4県で計10増える一方、宮城、福島、和歌山、広島、山口など10県で各1減る。

 政府の審議会が6月までに区割りの改定案を首相に勧告するのを受けて、次期衆院選から適用することが想定されている。

 しかし、党内では見直しにブレーキを掛けようとする動きが出ている。細田博之衆院議長が昨年12月、「地方を減らして都会を増やすだけが能ではない」と述べた。

 議論をまとめる立場の議長として非常識ではないか。しかも細田氏は、16年の改正案で提案者に名を連ねていた。

 二階俊博元幹事長(衆院和歌山3区)も今年1月、「迷惑な話だ。腹立たしい」と発言した。世耕弘成参院幹事長(和歌山選挙区)は地方の議席を減らさないために、都市部の定数を増やす方策を唱えている。

 反対する背景には、党内の公認調整が難しくなるという内輪の事情がある。議席数が減る県は自民現職が多数を占め、山口では安倍晋三元首相や林芳正外相、岸信夫防衛相ら有力者が影響を受ける見通しだ。

 アダムズ方式が導入されたのは、1票の格差が2倍を超えた09、12、14年の3回の衆院選について、最高裁が「違憲状態」と判断したからだ。

 先送りは司法判断をないがしろにする行為である。自ら決めたルールをひっくり返すような言動は身勝手と言うほかない。まずは法律通りに格差を是正すべきだ。

 今回の見直しを巡っては党内に「地方の声が届きにくくなる」との意見が根強くある。民意を国政に幅広く反映することは大切だが、1票の格差を放置していい理由にはならない。

 選挙制度は国会の構成を決める重要な枠組みだ。格差を最小にする努力を怠ってはならない。

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