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八神純子の雨がやんだら

八神さんが日常にふと感じたこと、分かち合いたいことをつづります。

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八神純子の雨がやんだら

風化することのない心 /愛知

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チャリティーコンサートの楽屋で共演した音楽仲間と記念撮影。中央奥が筆者
チャリティーコンサートの楽屋で共演した音楽仲間と記念撮影。中央奥が筆者

 神戸があの日から27回目の1月17日を迎える前夜、私はすぐ近くの兵庫県芦屋市のホテルにいた。翌日に阪神大震災の被災地から東北の被災地へ向け、毎年この時期に行ってきたチャリティーコンサートを予定していたためだ。

 テレビをつけると、大震災のドキュメンタリー番組で、70歳前後と見受けられる男性がカメラを前に、とつとつと話をしていた。震災で息子さんを亡くした父親、と紹介されていた。自宅1階で家屋の下敷きになって亡くなった息子さんは、本当ならば震災が起きた前日の16日に自分の家に帰る予定だった。それなのに、震災当日に自宅にいたのは「体調がよくない、という言葉に『もう1泊していけばいい』と私が薦めたから。もし自分がそう言っていなかったら、息子は死なずに済んだ」とその男性は自分を責めていた。

 ただ、その男性には、その1泊が別の思い出も残していた。どういうわけか、息子さんに銭湯に誘われたのだという。背中を流し合い、いろいろな話をした、と言うその男性の顔には、自分を責めていた時とは全く違うほほ笑みがあった。

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