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「さあ、行くぞー」。昨年の12月上旬、秋田県男鹿市の脇本漁港に、漁師たちの声が響いた。「第八長洋丸」は鉛色の海に飛び出すと、いてつく風雪とうねりを乗り越え漁場を目指す。「しっかり船につかまれよ。いい写真撮れるまで毎日来いよ」。船上でよろめく私に、天野長兵衛船長(72)の声が勇気をくれた。
秋田に伝わる初冬の風物詩「季節ハタハタ漁」が、幕を開けた朝だった。
ハタハタは、世界的にも珍しい気象現象「冬季雷」が秋田の海上にとどろき、海がしける12月ごろ、深海から大群を成して沿岸に押し寄せる。「藻場」に、卵を産み付けるためだ。その僅か1カ月ほどの間に「小型定置網」や「刺し網」で行われる漁が「季節ハタハタ漁」と呼ばれる。長く厳しい秋田の冬に恩恵をもたらすことから、ありがたい魚として貴ばれてきた。ハタハタへの信仰心は文字にも表れ、雷神が遣わす「神の魚」として「…
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