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小さい頃のことは、今では断片的にしか思い出せません。それでも脳裏のかなたに埋もれている記憶の景色を手繰り寄せると、迫り来る来訪神「ナマハゲ」を眼前にして泣き叫び、母に助けを求める自身の姿が、おぼろげながら現れてきました。それは、実家のある秋田市内から、家族で男鹿を訪れた際の観光イベントだったと思います。
その記憶と同時に、男鹿の荒々しい奇岩と美しい海岸線が太陽の光を受け止め、神々しく輝いていた光景がまぶたに浮かびます。特に、遠浅の海で幼い子ども連れの家族が楽しそうに過ごしている「鵜ノ崎海岸」の透明感のある景観美は、ナマハゲにおびえた私の心に、平静を取り戻させてくれたことを覚えています。
時は過ぎ、志のままにカンボジアに渡り、シャッターを切り続けた11年間。その時代を経て私は今、男鹿を中心に、故郷・秋田の伝統の営みを見つめる撮影を重ねています。取材の過程で、記憶に導かれるように郷愁を誘う男鹿の海岸線へ再び目を向けました。数十年ぶりにファインダーから見えた鵜ノ崎海岸は、日本海に沈む夕日を水面が受け止める雄大な光景が広がっていました。
「日本の渚百選」に選ばれ、空の模様を鏡のように映す海面から、「秋田のウユニ塩湖」とも称される鵜ノ崎海岸。干潮時には沖合200メートルほどまで歩いていくことができ、その絶景を間近で見られます。県内外から多くの人が訪れ、今も変わらぬ人々の憩いの場となっています。【聞き手=秋田支局長・佐藤岳幸】
次回は徳島県です
「言わせて!県民あるある」への投稿をお待ちしています。ふるさと自慢や旅行・出張時の思い出などをお寄せください。27日は宮崎県、締め切りは19日です。400字程度、県名、住所、氏名、年齢、職業(元職も可)、電話番号(携帯番号も)を明記し、郵便は〒100―8051(住所不要)毎日新聞地方部「わたしのふるさと便」係、メールはt.chihoubu@mainichi.co.jpへ。掲載分の著作権は毎日新聞社に帰属します。ただし、投稿者本人の利用は妨げません。毎日新聞の電子媒体にも掲載します。
■人物略歴
高橋智史(たかはし・さとし)さん
1981年生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。2007~18年にカンボジアに在住し社会問題を取材。国内外のメディアに写真が掲載されている。19年、写真集「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」で土門拳賞を受賞。毎日新聞秋田県版で「高橋智史が撮る故郷・秋田 受け継がれしものたち」を連載中。