昨年末のドーピング違反が判明したフィギュアスケート女子、カミラ・ワリエワ選手の北京オリンピック個人種目への出場が認められた。スポーツ仲裁裁判所が裁定を下した。今夜のショートプログラムに出場する見通しだ。
ワリエワ選手は世界的に注目を集める選手の一人だ。ロシア・オリンピック委員会(ROC)の一員として出場し、団体での優勝に貢献した。
検査結果が明らかになったのはその後だ。心臓病の治療などに使われる禁止薬物「トリメタジジン」が検出されたという。
ロシア反ドーピング機関はいったん、ワリエワ選手を資格停止処分としたが、翌日には解除し、出場継続を容認した。
これに対し、国際オリンピック委員会(IOC)と世界反ドーピング機関(WADA)がロシア側の判断を不服として提訴した。
WADAの規定では16歳未満の選手は柔軟な対応を取るべき「要保護者」と位置付けられ、15歳のワリエワ選手は該当する。
仲裁裁判所はこうした点を考慮し、出場継続を認めた。ROCは「五輪期間中の検査では陰性だ」と主張している。
ただ、今回の裁定で疑惑がすべて晴れたわけではない。陽性反応が出た事実は残る。ロシア側には具体的に説明する責任がある。
ロシアからスウェーデンの検査機関に送られた検体の分析に約1カ月半も要したのはなぜか。新型コロナウイルスの感染拡大で検査に遅れが出たというが、詳しい経緯は明らかにされていない。
本人側からの異議申し立てを受け、当初の資格停止処分をすぐに解除した根拠も不明だ。
ロシアでは近年、選手への薬物投与や検査不正が相次いでいる。2019年にはWADAが、東京五輪や北京冬季五輪を含む主要国際大会への4年間の出場停止処分を科した。
このため、今大会には潔白が証明された選手が「ロシア」ではなく、「ROC」として個人資格で参加しているはずだ。
だが、今回の一件でその「潔白」にも疑義が生じたといえる。競技の公平性を確保し、選手の健康を守る。五輪の信頼を取り戻すには、IOCの対応も問われる。