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66年変わらぬ「売春防止」から脱却 新たな女性支援法が必要な理由

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東京・新宿区役所前に設置された居場所のない10代女性支援のための「バスカフェ」=東京都新宿区で2022年2月2日午後10時5分、塩田彩撮影
東京・新宿区役所前に設置された居場所のない10代女性支援のための「バスカフェ」=東京都新宿区で2022年2月2日午後10時5分、塩田彩撮影

 DVや性暴力、貧困などに苦しむ女性を支援する「婦人保護事業」の見直しに向け、超党派の国会議員が、今国会で新法案の提出を目指している。事業の根拠となってきたのは売春防止法(売防法)だ。新法が成立すれば、売防法による女性保護の政策が根本的に変えられる。なぜ今、新法が必要なのか。困難を抱える女性の支援を巡る課題を追った。

 東京都心部の最低気温が1度まで冷え込んだ2月初旬の夜。新宿区役所前にピンク色のバスが止まり、隣には周囲をシートで覆った同色のテントが設置された。スカートやブーツ姿の若い女性たちが次々とテントを訪れる。しばらく滞在した後、女性たちは食料や衣類などの支援物資が詰め込まれた大きな紙袋を両手に提げ、JR新宿駅の方向へ帰って行く。

困難抱える若い女性、コロナ下で相談増

 「バイバイ。またLINE(ライン)して」。笑顔で見送るのは一般社団法人「Colabo(コラボ)」の仁藤夢乃代表(32)だ。居場所がなく夜の街をさまよう少女たちのために約5年前から10代女性限定の「バスカフェ」を新宿区や渋谷区で開催。仁藤さんやスタッフがバスカフェを訪れる少女たちと関係を築き、必要に応じて宿泊や病院受診、生活保護申請などの支援をするほか、SNSを通じた相談事業も行っている。新型コロナウイルスの感染拡大後は、「バイト先を解雇された」といったSOSが相次ぎ、2020年度の相談者数は前年度の約2・5倍の延べ1494人に増えた。「最近は、バスカフェの開始時に20人くらいが一気に来て列を作ることもあります」と仁藤さんは話す。

 女性たちの中には、虐待を受け家にいられずネットカフェや知人宅を転々とし、性売買に取り込まれる人もいる。コラボは寄付や助成金で女性を一時保護するシェルターや中長期滞在型のシェアハウスを運営するが、人件費が足りず、スタッフは常駐できていない。

 仁藤さんが指摘するのは、公的支援の不十分さだ。「支援が必要な人にほど公的支援が届いていません。民間団体はきめ細かく柔軟な対応ができますが、財政的にも限界があります。婦人保護事業でもっと女性を保護できるようにしたり、民間への財政措置を講じたりすべきでしょう」と訴える。

売防法が根拠 66年間見直されず

 婦人保護事業は、困難を抱える女性を対象とする公的支援制度だ。各都道府県にある婦人相談所を中心に運営され、相談所や福祉事務所に配属されている婦人相談員らが女性から相談を受け、婦人相談所の判断で、一時保護所で保護したり中長期滞在型の婦人保護施設に入所させたりして生活や自立への支援を行う。

 何が問題か。まず事業は1956年制定の売防法…

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