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外国人労働者の人権を軽視する制度が生んだ悲劇といえる。
熊本県の農園で働いていた技能実習生のベトナム人女性が、自宅で死産した双子を遺棄した罪に問われ、1、2審で執行猶予付きの有罪判決を受けた。
福岡高裁は先月、二重の段ボール箱に収め、封をして自宅に置いていたことについて、隠す意図があり遺棄に当たると認定した。
しかし、女性は遺体をタオルで包み、双子の名前やおわびの言葉を書いた手紙を入れていた。翌日に出産を知られるまで、そばを離れなかった。刑事責任を問う必要があったのか疑問だ。
根本的な問題は、女性が妊娠を理由に解雇されることを恐れ、誰にも相談できなかったことだ。
インターネットで、妊娠した実習生が強制的に帰国させられるケースを知ったという。送り出し機関への支払いなどで、来日時に約150万円の借金を負っていた。家族の生活費も含め、月給の大半を母国に仕送りしていた。
技能実習生にも労働関係の法律は適用される。妊娠を理由とした解雇は禁止され、雇い主は体調に配慮することが求められる。
厚生労働省などは、受け入れ団体や雇い主に注意喚起している。しかし、十分に徹底されているとはいえない。今回のケースでも、妊娠しても解雇はされないとの説明はなかったという。
2020年末までの3年余で、妊娠や出産を理由に637人が技能実習を中断した。再開できたのは11人に過ぎない。
送り出し機関との契約で、実習期間中に妊娠しないことを約束させられる事例もある。実習生が出産後の死体遺棄容疑などで逮捕される例が相次いでいる。
そもそも、制度自体に問題がある。実習生は家族を連れてくることが認められておらず、妊娠や出産を想定した支援体制が整っていない。
収入が少ないため、妊娠・出産をすれば生活は厳しくなり、働く期間が限られていて育休の取得も難しい。生まれた子どもの在留資格を得るのはハードルが高い。
技能実習を隠れみのに、劣悪な環境での労働を強いる制度は廃止すべきだ。外国人受け入れの仕組みを根幹から改める時である。