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府立大の環境活動10年 未来へ続くキャンパス作り=吉田敦彦 /大阪

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キャンパス・ビオトープのコアとなる通称「府大池」 拡大
キャンパス・ビオトープのコアとなる通称「府大池」

 ほっと一息つける昼休み。三密を避け、池のほとりのベンチでお弁当を黙食することがある。四季の花が咲き、蝶やトンボが舞い、サギが小魚をついばみ、カモの親子が泳ぐ。ここは、大阪府立大学・中百舌鳥キャンパス(堺市)の真ん中にある通称「府大池」だ。広いキャンパスには講義棟だけでなく、大小の池と水路、様々な樹木が植栽された緑地帯、水田や果樹園などもあり、豊かな生物相がある。

 「E(え)~きゃんぱすの会」の学生が先日、インタビューをしたいと私の研究室にやってきた。同会は学生が主体となり、大学の環境や持続可能な社会を目指す活動を検証し、提言する団体。毎年その成果を「環境報告書」として作成してきた。10年続いたその報告書も今年度で終刊となる。今年4月、いよいよ大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生するためだ。学生たちはこれまでの活動を特集したいという。

ニュージーランドの環境教育推進校での授業実習。筆者が企画、引率したスタディーツアーにて=大阪府立大「環境報告書2021年度」最終号より 拡大
ニュージーランドの環境教育推進校での授業実習。筆者が企画、引率したスタディーツアーにて=大阪府立大「環境報告書2021年度」最終号より

 筆者は自身が取り組んできた、ユネスコ(国連教育科学文化機関)と連携して進めたESD(持続可能な開発のための教育)について話した。環境保全先進国・ニュージーランドで毎年行うスタディーツアー、その背後にある哲学も語った。

 その後、卒業生や退職教員まで追いかけて完成した報告書を見せてもらった。一読し、本学の活動が多くの熱意に支えられてきたことを改めて知った。

 府立大はSDGs(持続可能な開発目標)が提唱される以前から、環境理念を定めて「持続可能な社会の実現に向けた環境活動を一層強力に展開する」とうたってきた。キャンパス全体をビオトープ(生物群集の生息空間)と捉え、教職員と学生が協働してきた。

 例えば学生でつくる「里環境の会OPU」は、府大池で繁茂しすぎたヨシを夏と冬に刈り取ってビオトープのコア(中核)を保全している。200種以上の樹木、希少種を含む約40種の蝶、約20種のトンボといった生物多様性を追跡調査し、キャンパスでの絶滅危惧種リストも作った。

 「環境部エコロ助」は「できること・気づいたことから、楽しくエコ活動」をモットーに、100人規模の学生が自主活動を続ける。ゴミの分別、リユース食器の利用、学園祭模擬店の「エコ店舗」認定、馬術部で出る馬糞を堆肥にした花や野菜の栽培、さらに地元の子どもたちへの「地球戦隊エコレンジャーショー」など啓発活動にも取り組んでいる。

 学生の活動とリンクし、大学は正課の教育も展開してきた。全学を対象に「環境学」副専攻や「国際環境活動プログラム」を設け、フィールドワーク型授業も組み込んでいる。ベトナムでのハロン湾環境保全調査やマングローブ植林、現地小学校での環境教育活動などは定番となっている。

 筆者が話したESDの取り組みも報告書に盛り込まれていた。タイトルは「つながりのあり方を根本的に考える」。学生はしっかりと受け止めてくれていた。

 大阪公立大学の発足に伴い、学部・学域も再編される。中百舌鳥キャンパスの生命環境科学域は農学部になる。筆者の属する地域保健学域の教育福祉学類は、持続可能な社会の実現を目指す現代システム科学域に加わる。府立大で同学域長を長く務め、新大学でもSDGs戦略を担当する大塚耕司副学長は「市立大の学生たちも主体的に環境報告書を作る活動を始めています。どのキャンパスでも環境活動をしていく強い意志を感じます。新大学でも力を合わせていきたい」と力強く語った。

 折しも、両大学の学生合同チームによる「中百舌鳥キャンパス緑化プロジェクト」がスタートした。桜並木で囲まれた府大池のほとりで、地域の人たちも交えた恒例の「花まつり」を今年は開催できるだろうか。節目となる爛漫の春が待ち遠しい。=次回は4月掲載予定


 ■人物略歴

吉田敦彦(よしだ・あつひこ)さん

 1960年生まれ。大阪府立大教授(教育福祉学類)、特命副学長。専門は教育哲学、人間形成論。日本ユネスコ協会連盟理事。日本シュタイナー学校協会専門会員。近著に「世界が変わる学び ホリスティック/シュタイナー/オルタナティブ」(ミネルヴァ書房)。

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