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ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻。米欧や日本は対露制裁を決めるなど対立が先鋭化しています。

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「プーチンを恥ずかしく思う」熱烈ファンも嘆き 悲壮感ない親露派も

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キエフで25日、ロシア軍によるとみられる攻撃で破壊された自宅前で悲しみに暮れる住民=AP
キエフで25日、ロシア軍によるとみられる攻撃で破壊された自宅前で悲しみに暮れる住民=AP

 「朝、爆発音で目が覚めた」「退避したいが、車がない」。人口約121万人のウクライナ西部ジトーミルの大学で国際政治を教えている梅澤華子教授(49)のもとには、現地で暮らすパートナーや友人からひっきりなしに緊迫した連絡が届いている。ロシア軍がウクライナに侵攻してから一夜明けた25日。大学の冬休みで日本に一時帰国している梅澤教授に現地情勢を聞いた。【大野友嘉子/デジタル報道センター】

「みんな走り回っている」

 --ジトーミルに住む友人や同僚からは、どのような連絡がありますか。

 ◆ここまで大きな変化となってしまうとは、私を含め、現地の友人たちは思っていなかったようです。昨日、友人から「朝、爆発音で目が覚めた。近くの軍事施設が爆破されたようだ」とメッセージが来ました。

 この友人の家はジトーミル市街地にあるのですが、市街地から10キロ離れた場所に小さな軍事施設があります。彼の話では、(現地時間)24日朝、この軍事施設が空爆されたそうです。彼は街の人々の様子を「みんな走り回っている。スーパーで食料や水を買い込んだり、銀行でお金をおろしたり、車にガソリンを入れたりしている」と表現していました。

 私は、現地でイタリア人男性のパートナーと同居していますが、彼も24日朝まで自宅にいました。ところが、前述した近隣の軍事施設の爆破があったことと、ジトーミルが夕方にかけて空爆されるかもしれないとの情報が出回ったことなどから、急きょ、ジトーミルから退避することを決めました。「これから出発する」と電話がありました。車でポーランドを経由し、実家のあるイタリアのベルガモに向かう計画でした。

 しかし、出発こそしましたが、イタリア大使館から「状況が極めて流動的なので、現段階での移動は控え、安全な場所にとどまるように」との助言を受けたため、さしあたり、ジトーミル郊外の友人宅に一時的に避難することにしたそうです。

 ――退避するという連絡はどれくらい入っていますか。

 ◆退避したという連絡は、パートナー以外に、2家族からありました。ジトーミルよりさらに西方に住む親戚宅に車で向かうと言っていました。

退避できない人も

 ――2家族というと、多いとは言えませんね。

 ◆危険だから退避したいという人はもっといると思いますが、その費用をまかなえず残る人たちが多いのではないかと想像します。友人の高齢男性との会話などでは、「(ジトーミルを)出た方がいいと思うのだけど、車がないのでどうしようもない」とのことで、「誰かに乗せてもらえないの?」と尋ねると、「頼れる人がいない」と。

 ウクライナは欧州の中で最も貧しい国の一つです。例えば、私は現地の国立大学で教授待遇で働いていますが、月収は約4万円です。それでも、同年代のウクライナ人と比べてまだ良い方に入ります。

 そうした金銭事情の中で、退避するための車とガソリン、食料、滞在先を確保するのは簡単なことではありません。私の友人の男性のように、とどまるしかない人は他にも多くいると思います。退避できた私のパートナーは、ジトーミルに生産拠点を置くイタリアの企業に勤めているので、現地人と比べると収入が高いという事情があります。

以前は「対岸の火事」だった?

 ――24日の朝に爆撃音がして、退避できる人たちはしたということですね。それ以前は、どのような雰囲気でしたか。

 ◆ほんの1週間ほど前までは、「ジトーミルあたりでは何も起きないでしょう」と考える人が多かった印象です。ウクライナ東部2州では、「独立」を宣言した反政府軍とウクライナ政府軍との間で戦闘状態が過去8年間にわたって続いているために、昨年末までに国境地域に9万(当時)のロシア兵が集結したことさえ、大きな驚きをもって迎えられることはありませんでした。

 プーチン大統領による東部ドネツク州、ルガンスク州の独立「承認」については、さすがに彼らも驚いたようですが、それにもかかわらず、少なくとも私の周辺の人々の間では、強い危機感は感じられませんでした。

 私について言えば、出国に際してやはりロシア軍の動きが気にかかっており、「1月末に予定通りにウクライナに戻れるのだろうか? その頃までには、入国できないような事態になっているのではないだろうか?」という懸念が脳裏をかすめていました。ですが、ウクライナ人の友人に言わせれば「ロシア軍全体の数を考えれば10万など大した数ではないし、その人数でウクライナを制圧することはそもそも無理だ。何も起こらないから大丈夫」ということでした。

 ――それはジトーミルがロシアや、戦闘が続く東部ドンバス地域から離れた西部に位置するからでしょうか。

 ◆はい、そうした地理的な要因は大きいと思います。遠い地で起きている出来事という受け止めなのかもしれません。私がウクライナに来てから、同僚や友人との間で、東部の戦闘のことが話題にあがったことはほとんどありませんでした。

 それでも国内で確かに起こっていることなので、言うまでもなく、完全に無関心ということではありません。ジトーミル市街地の中心にある広場には、大きな掲示板が立っているのですが、そこには兵士の顔写真が何枚も貼られています。どれもそう古くはない写真ばかりなので、恐らくは東部での紛争の犠牲者であろうと思って友人に尋ねてみたところ、「その通りだ」と教えてくれました。花が手向けられていることもあります。

 また、昨日、勤務先の大学の卒業生がウクライナ軍に入隊していて、東部で銃撃されて亡くなったという連絡が同僚からありました。表だって話題にならなくても、東部での長きにわたる戦闘の痛みは、全てのウクライナ人の間で、さまざまな形で分かち合われているのかなと思います。

恥じ入るプーチン支持者も

 ――24日を境にガラリと雰囲気が変わったのですね。

 ◆東部での紛争の激化についてはある程度の覚悟があったように思いますが、キエフが攻撃されることは、全く想定していなかったようです。この1週間ほどで少しずつ友人の間でも漠然とした不安感が広がってきたことを感じてはいましたが、それでも首都が攻撃を受けることまでは想像さえしておらず、大きな衝撃を受けたようです。

 ロシア人も驚いているのではないでしょうか。私の友人に、熱烈なプーチン大統領の支持者のロシア人男性がいるのですが、昨日、彼からフェイスブックのメッセンジャーを通じて謝罪されました。「申し訳ない。彼(プーチン大統領)…

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【ウクライナ侵攻】

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