「貧困は女性のせい?」桐野夏生さんが語るジェンダー格差への怒り
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「苦しみ悩む人たちの中に入って、彼らの物語を書くしかないと思っています」。小説を生み出す自らの取り組みを、作家の桐野夏生さん(70)はそう話す。男性中心の格差社会であえぐ女性たちの怒りや痛みをすくい取り、時に衝撃的な筆致で表現してきた。最新刊でも若い女性の貧困と生殖医療に焦点を当てる。一方、昨年には日本ペンクラブ初の女性会長に就任。女性の仕事やジェンダー格差、ネット上での中傷などに関する発信にも意欲を見せている。桐野さんの“現在地”とは。詳しく聞いた。【和田浩明/デジタル報道センター】
若い貧困女性の代理母で新作
3月4日刊行の新刊「燕(つばめ)は戻ってこない」(集英社)。まず、物語のあらすじを簡単に説明しておこう。
主な登場人物の一人は、東京都内で暮らす地方出身の契約社員で29歳の大石理紀(リキ)だ。病院事務の月給は手取り14万円。爪に火をともす「お先真っ暗」な生活を送っている。
そんなリキは友人に勧められ、卵子提供で収入を得ようと訪れたクリニックで、代理母になることを打診される。不妊治療が頓挫した元バレエダンサーの43歳、草桶基(くさおけ・もとい)が「自分のDNAの存在を見たい」と、一つ上の妻・悠子を説得して持ち掛けた話だ。費用を持ったのは息子の子供に遺産を残したい基の母・千味子だった。
リキは1000万円の約束で「子宮を売る」。人工授精は成功し出産に至るが、自らの中に湧き上がった赤子への感情に突き動かされたリキが取る驚きの行動で作品はラストを迎える。
「無我夢中、五里霧中で書きました。これでいいのかもわからないんですよ」と言う桐野さん。今作の月刊誌連載は2019年に始まったが、女性を取り巻く環境は悪化の一途をたどっている。…
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