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藻谷浩介・評 『倭国の古代学』=坂靖・著

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 (新泉社・2970円)

物証の推理から浮かぶ生々しさ

 掲題書は、3世紀の邪馬台国から、6世紀の欽明大王までを取り扱う、古代倭国(日本)の通史だ。著者の坂(ばん)氏は、奈良県立橿原考古学研究所に勤務し、数々の遺跡を発掘しつつ研究を重ねてきた。

 坂氏は、関東から北部九州、そして朝鮮半島南部に及ぶ主要な遺跡(古墳や集落跡など)の、位置や規模や出土品から、そこに存在した権力の、年代と勢力範囲を推理する。そしてその理解を、日本・中国・朝鮮半島の史書の記述と突き合わせる。他の多くの史書が、時代を下った8世紀に編纂(へんさん)された日本書紀の、天武朝の正統性強調を意図した記述の解釈にばかり深入りしがちなのとは、真逆のアプローチだ。この本の分析に類書にない納得感がある理由だろう。

 第一章で著者は、邪馬台国の勢力圏は北部九州限定だったと推測する。魏志倭人伝にある卑弥呼の勢力圏は29カ国であり、近畿から北部九州までの広い領域に対応するものではないと。現在の対馬、壱岐、唐津、糸島、福岡がそれぞれ一つの国に数えられていたことからしても、しごくまっとうな地理感覚に立った議論だ。

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