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コロナ対策の見直し あくまでも命を最優先に

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 新型コロナウイルス対策を巡り政府が行動制限の緩和も視野に見直し議論を始めた。新規感染者数が減少傾向に転じたためだ。

 経済界などから、社会・経済活動の回復を求める声が出ている。欧米では緩和の動きが広がる。英国はイングランドでの行動規制を全廃した。

 オミクロン株は若い世代を中心に重症化率が低い。承認された飲み薬の活用と、ワクチンの3回目接種が進めば、リスクをさらに下げられる可能性もある。

 だが、現状では重症者数や死者数を抑え切れていない。見直しの議論にあたっては、国民の命と健康を守ることを最優先すべきだ。

 感染を完全に封じ込められないとしても、重症化や死亡を防ぐよう努めなければならない。

 オンラインを活用するなど外来診療でリスクの高い人を見極める。自宅療養で容体が悪化した人を見逃さない。こうした体制を整備し、医療資源を有効に使えるようにすることが欠かせない。専門医がいる病院が、重症者の治療に専念できる環境を整えたい。

 高齢者を守る取り組みは強化しなければならない。介護施設では集団感染が起きやすい。専門家の指導を踏まえた対策の徹底や検査の拡充が不可欠だ。

 課題も見えてきた。

 まず、社会インフラをどう維持するかだ。オミクロン株では濃厚接触者の行動規制が厳しすぎたため、行政サービスや公共交通の機能が停滞した。

 新たな変異株が現れることも想定される。濃厚接触者の範囲や自宅待機期間を、特性に応じて臨機応変に見直すことが求められる。

 行動制限のあり方についても議論が必要だ。感染が広がる場所は学校や職場など多様化している。まん延防止等重点措置の規制対象が飲食店に偏っていることが疑問視されている。検証し、より効果的な規制を探るべきだ。

 新型コロナの流行が約2年に及ぶ中、感染対策と社会・経済活動のバランスをどう取るのかが問われている。

 さまざまな分野の専門家が提示する選択肢を踏まえて、国民的な議論を深めなければならない。政府は、そのかじ取りに当たる責任がある。

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