外環道トンネル工事で「町は虫食い状態」 住民ら全面凍結訴え
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東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事差し止めを一部認めた28日の東京地裁決定は、住宅街で道路が陥没する事故が現実に起き、住民が抱える不安は看過できないと判断した。ただ、差し止め区間は一部にとどまり、住民らは「全面凍結すべきだ」と国などに踏み込んだ対応を迫った。
懸念が現実に「不安な日々変わらぬ」
「画期的な決定だ」。仮処分を申し立てた住民と弁護団は同日夕、東京都内で記者会見し、主張を一部認めた決定を評価した。ただ、工事区間の直上付近に住み、差し止めが認められた東京都調布市の丸山重威さん(80)は「差し止めの範囲は狭すぎる」と険しい表情を変えなかった。
丸山さんが自宅を購入したのは1980年。当時、高架式を予定していた外環道の計画は、約3000世帯の立ち退きを必要とし、住民の反発から凍結されていた。だが、99年に石原慎太郎氏が都知事に初当選すると計画は動き出した。2007年に地下方式に変更され、その後、大深度地下工事の計画が進んだ。
「憲法は財産権を保障しているのに、なぜ人の家の地下で勝手に工事をすることが許されるのか」。丸山さんら一部住民は、崩落の危険性などを理由に反対した。しかし、国などは「地上への影響はない」との立場を崩さなかった。17年2月にシールドマシン(巨大掘削機)による工事が始まり、司法に救済を求めた。
20年10月18日、懸念は現実に変わった。昼前に丸山さんの自宅からわずか30メートル離れた道路に亀裂が見つかり、夕方には大きな穴(長さ5メートル、幅3メートル、深さ5メートル)に拡大した。事業者は工事を中断し、地盤の監視強化などの再発防止策をまとめたものの、工事自体の危険性は認めなかった。
地裁決定は、工事が再開されれば丸山さんの自宅に倒壊などの危険性が具体的に認められるとした。丸山さんは「近隣に住んでいた人がいなくなり、工事の影響で町が虫食い状態になっている。事業者側は反省し、全ての工事を止め、再検討してほしい」と訴えた。
一…
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