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ウクライナ侵攻

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年。長期化する戦闘、大きく変化した国際社会の行方は……。

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屈折した独裁者、プーチン氏 「冷戦敗者」の屈辱晴らすウクライナ侵攻

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ロシアのプーチン大統領=モスクワで2月24日、ロシア大統領府提供・AP
ロシアのプーチン大統領=モスクワで2月24日、ロシア大統領府提供・AP

 ウラジーミル・ウラジーミロビッチ・プーチン、69歳。レーニン、スターリンに料理人として仕えた祖父、破壊工作部隊の兵士として第二次世界大戦に従軍した父を持つ(「プーチン、自らを語る」より)。そうした「プーチンの血」がロシアをウクライナ侵攻に向かわせたのかどうかは知る由もないが、ロシア大統領の「正体」をじっくりと考えてみた。

 「結局、プーチン氏は世界的な帝国を作り、そのトップに立ちたいだけの人間です。犠牲者のことなど顧みず、自らの野望を満たす方が大事だと考えている。独裁体制が長くなり、誰も止めることができません」。そう語るのは、日本在住のウクライナ人国際政治学者、グレンコ・アンドリーさん(34)である。「プーチン幻想」など日本語の著書もあるアンドリーさんは、プーチン氏率いるロシア軍の侵略を、軍事力によって国際秩序を根本から覆す蛮行だと、激しく糾弾するのである。

 そのプーチン政治の本質は、力の誇示で国民や他国を抑えつけようとする「マッチョ政治」、男性優位の思想だと指摘するのは、国際政治学者で元東京都知事の舛添要一さん(73)だ。「ヒトラーの正体」の著書もある舛添さんは、プーチン氏と「ナチス・ドイツ」のヒトラーの相似性を挙げる。「プーチン氏は離婚していますが、それ以前にファーストレディーとして妻が外交の表舞台に登場したのを見たことがない。男の強さや誇りを強調する『マッチョ志向』で、男女同権などの発想がない。ヒトラーが私生活を明かさず、愛人のエバ・ブラウンの存在を公表しなかったのと同じです」

 ロシア政治が専門の法政大の溝口修平教授(43)はこう見るのだ。「プーチン氏は毎年、国民と直接の対話をするテレビ番組に出演し、生放送で何時間も国民の不満を直接聞くというパフォーマンスをやっています。ロシア国民の間では、困った時に助けてくれる親分的なイメージが定着しています」

 ヒトラーとの対比でいえば、第一次世界大戦の敗戦国ドイツは巨額の賠償金を科せられ、領土も削減された。その苦境が、ヒトラー率いる国民社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)の台頭を招いた一因とされる。その後、オーストリア併合やポーランド侵攻などにより、第二次世界大戦が勃発した。

 一方のロシア。東西冷戦時代に超大国の一翼を担った旧ソ連は1991年に崩壊し、連邦を構成する15の共和国からは独立宣言が相次いだ。ウクライナもその一つだ。プーチン氏の側近とも交流がある舛添さんは「ウクライナ侵攻は、自分たちが失った地域を取り返すだけだという考え方では、ヒトラーと同じです」と分析する。アンドリーさんは首都キエフにいる家族の安否を心配しながらこう話した。「彼の認識では、ソ連崩壊によって独立した国々は独立国ではなく奪われたロシアの領土。彼の中では他国への侵略ではなく、自分たちの領土をもう一度取り戻すという考えなのです」

 プーチン氏は旧ソ連の情報機関・国家保安委員会(KGB)の情報員として活動後、…

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【ウクライナ侵攻】

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