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ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻。米欧や日本は対露制裁を決めるなど対立が先鋭化しています。

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ウクライナは「満州国」に? 中国近現代史家が憂えるいつか来た道

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ロシア軍の侵攻が続くウクライナの首都キエフで攻撃を受けて煙を上げるテレビ塔=1日、ロイター
ロシア軍の侵攻が続くウクライナの首都キエフで攻撃を受けて煙を上げるテレビ塔=1日、ロイター

 大国が隣国を武力で脅し、言うことを聞かなければ軍を進めて意のままにする――。ロシアのウクライナ侵攻の意図を一言で言えばそんなところだろうか。この手法は、戦前・戦中の傀儡(かいらい)国家「満州国」(現在の中国東北部)建国をはじめとする、旧日本軍の中国でのやり方に似ているとの見方がある。否定されたはずの大昔の帝国主義的手法が21世紀の今になって復活してしまったともいえそうだが、歴史の教訓から得られるものはないだろうか。愛知大学非常勤講師で、日中戦争や同時期の対日協力政権(傀儡政権)史に詳しい広中一成さん(43)に聞いた。【聞き手・増田博樹/デジタル報道センター】

 ――今回のロシアのウクライナ侵攻をどう感じていますか。

 ◆中国近現代史を研究する身としては、どうしても過去の日本の中国への侵攻を重ね合わせて見てしまいます。もちろん今回はSNSやサイバー攻撃もあるうえに、一方の当事者が核保有国でもあり、過去とまったく同じだとは言えませんが、本質的には似たようなところがあると感じています。

 例えば、今回のロシアには北大西洋条約機構(NATO)への対抗、つまり、自分の国と仮想敵の間にあるウクライナに緩衝地帯や友好国を設けたい、という意図があります。一方、満州国が1932年に旧日本軍の謀略と武力によって生まれた背景にも、ソ連の南下を防ぐ防波堤として中国東北部を日本の支配化に置くことが不可欠、という考え方がありました。

 ――ウクライナも満州国のようになるのでしょうか。

 ◆旧日本軍は中国東北部で武力を背景に親日派の組織をいくつも作り、それを集めて満州国を作りました。その過程で、軍事面は日本に任せる取り決めを満州国との間でしています。ロシアもNATOに対抗するという動機から考えると、ウクライナを言うことの聞く政権に変えたいはずです。ロシアが軍事力を広げ、親露派を使ってウクライナを傀儡化していく可能性はあると思います。今年は満州国建国から90年なのですが、1世紀近くたっても基本的な進め方が変わらないように見えます。驚きです。

 ――一方で、ロシアとウクライナは停戦交渉も進めています。どう見ますか。

 ◆1931年に始まり満州国建国のきっかけになった満州事変では、日中双方が1933年に停戦協定を結び、満州国の南に隣接する河北省東部地域に非武装地帯が設けられました。ただ、この時は中国側代表が日本の支配地域に入っての交渉でした。今回のロシア・ウクライナの交渉でも、ウクライナ側がロシアの兄弟国であるベラルーシに乗り込んでいます。まさに敵地と言ってよい場所ですし、武力をちらつかされているわけですから、ウクライナに都合のいい条件が言えるわけも、通るわけもありません。

 旧日本軍の場合、「非武装地帯」「中立地帯」と言いながら軍の一部を残しました。結局、2年後の1935年には同地域に満州国に続く傀儡政権を作ったことも指摘しておきたいと思います。今回のロシアもウクライナの中立化、非軍事化を主張していますが、本当の意味での中立化や非軍事化は考えにくく、ロシアに都合のよい形にすると考えるのが自然です。「だまされないぞ」と思っていた方がよいと思います。

ロシアに歯止めがきかなくなる恐れはないか

 ――ロシアは「居留民保護」を軍事介入の理由にしています。また、ロシアとウクライナは「兄弟民族」とも主張しています。

 ◆これも過去の日本に似ています。日本は「居留民保護」を名目に中国にたびたび軍を送ったり増強したりしました。1900年の義和団事件(反帝・排外戦争。日本など8カ国連合軍が鎮圧した)への派兵、日中戦争の端緒になった1937年の盧溝橋(ろこうきょう)事件の当事者になった部隊などがそれにあたります。中国東北部でも、この地域を支配していた張作霖の爆殺事件(1928年)などで反日意識が高まり、在留日本人が危害を加えられるケースが増えました。満州事変を起こした理由の一つもこうした居留民の保護でした。昔も今も使いやすい口実かと思います。

 「民族」についていえば、満州国には「五族協和」というスローガンがありました。日本民族を含め関係する五つの民族が仲良くやっていこう、という趣旨なのですが、…

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【ウクライナ侵攻】

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