特集

Gender

ジェンダー(社会的に作られた性差)にとらわれない、平等な社会とは?格差解消のための課題を考えます。

特集一覧

声をつないで

選択的夫婦別姓を阻む壁は「家意識」の亡霊 井田奈穂さんに聞く

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
選択的夫婦別姓について語る「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の井田奈穂事務局長=東京都千代田区で2022年2月24日、北山夏帆撮影
選択的夫婦別姓について語る「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の井田奈穂事務局長=東京都千代田区で2022年2月24日、北山夏帆撮影

 法相の諮問機関である法制審議会が、「選択的夫婦別姓」の制度導入などの民法改正案要綱を1996年に答申してから四半世紀が過ぎた。自民党の伝統的な家族観を重視する保守派などの反対で、今も法改正のめどは立っていない。地方議会への陳情や請願を通じて選択的夫婦別姓の実現を目指す市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の井田奈穂事務局長(46)に、導入を阻む問題点について聞いた。【畠山嵩】

 ――選択的夫婦別姓の制度導入が日本で進みません。

 ◆選択的夫婦別姓制度がない結果、お互いに姓を変えたくないカップルには三つのことが起きている。第一に、結婚が破談になる。第二に、一方が望まない改姓をして、通称使用で名字の使い分けに苦しみながら生活をしている。三つ目は、不利益があると分かりながら「事実婚」をしている。事実婚は、名字の対等性は担保されるが法的保障は欠ける。子供の親権が一方にしかなく、相続ができない可能性もある。選択的夫婦別姓が進まないのは、妻子が夫に帰属する形が正しいと考える家族観が社会に残っているためだ。皆が改姓を望んでいるわけではない。改姓をしない選択肢があるだけでハッピーに結婚できる人が増えると思う。

 ――「法律婚」をした夫婦の大半は、女性が改姓しています。

 ◆法律婚の夫婦の約95%は、女性が改姓している。「女性が変えて当たり前」、「変えないのはわがままだ」という風潮が依然としてあるからだ。いわゆる「家意識」が今も亡霊のようにずっと日本の法律の陰に潜んでいる。1947年に法的にはなくなった「家制度」だが、その後も生き続けてきた。選択的夫婦別姓に反対の人たちは結局、(家長の男性が家庭で権力を持つ)家父長制の社会をモデルにしているので、法制度を変えて、あつれきを生みたくないのだろう。

通称使用は解決にならない

 ――「旧姓の通称使用」で…

この記事は有料記事です。

残り1578文字(全文2354文字)

【Gender】

時系列で見る

関連記事

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集