札幌五輪招致このままでいいか 小笠原博毅氏「消費されるエンタメ」
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北京オリンピックが閉幕したと思ったら、次の次、2030年冬の五輪・パラリンピック招致を目指し、3月に札幌市が市民の意向調査に乗り出すという。半年前の東京五輪はもはや過去のこととしてほとんど顧みられない。「東京オリンピック始末記」を1月に出版した小笠原博毅・神戸大教授(文化研究)は、五輪は「消費されるエンタメ」と化していると論評する。札幌招致の議論を始める前に、詳しく聞いた。【山下智恵/デジタル報道センター】
「東京五輪のスローガンを思い出してください。確か、招致の際、安倍晋三首相は『復興五輪』を掲げ、開催時の菅義偉首相は『人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして開催する』と言っていませんでしたか。レガシー(遺産)との言葉も繰り返されました。結局何がレガシーとして残ったのでしょう。顧みられることはありません。わずか半年前のことですよ」
小笠原さんが東京五輪の「理念」をひもとく。「レガシー」と言われて、大会開催費を思い浮かべた。大会組織委員会が発表した収支で大会費用は1兆4530億円。招致段階の7340億円から倍増した。しかし、この額には暑さ対策や道路整備費用などの大会関連費は含まれておらず、会計検査院は3兆円を超えると指摘する。今後、五輪開催のために整備した競技場などのインフラが垂れ流す赤字は含まれていない。
「長野県は長野五輪(1998年)の負債を払い終わるまでに約20年かかっています。東京五輪の負債はどれほどか、全貌をつかむのは極めて困難です。不都合な情報は公開されないような仕組みになっているのではないでしょうか」
小笠原さんが1月に出版した本の題名を「始末記」としたのは、誰も東京五輪の総括をしていないと思うからだ。
小笠原さんが語気を強める。「(五輪関係者の多くは)振り返ってなどほしくない人たちばかりなのでしょう。IOC(国際オリンピック委員会)は開催後の感動だけを印象に残し、それ以外の不都合なことは振り返ってほしくありません。大会の継続に支障があるからです。誘致した都や国も同じです。巨額の負債は明るみに出したくない。『アスリートは頑張った』だけで終わらせたいのです」
五輪が見せる「平和な世界」
東京五輪の総括ができていないという指摘は、そのまま続く北京五輪にも当てはまりそうだ。
東京五輪では森喜朗元首相の女性蔑視発言や、開会式関係者の度重なる不祥事で、…
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