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日本のジェンダー、現在地は?国際比較データを本田由紀さんと読む

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本田由紀さん=東京都練馬区で2018年8月17日、和田大典撮影
本田由紀さん=東京都練馬区で2018年8月17日、和田大典撮影

 家族、学校、政治、職場……。日本社会のさまざまな面を世界各国のデータと比べてみると、これまで当たり前と思ってきたことがちょっと違うことに気づく。では、日本の「ジェンダー」を巡る現状はどうだろう? 豊富な国際比較データから日本を分析した「『日本』ってどんな国?」(ちくまプリマー新書)の著者、社会学者の本田由紀・東京大学大学院教授と関連する調査を見ながら、浮かび上がる課題を考えた。【上東麻子/デジタル報道センター】

表裏一体、男性の「私的」領域の不活躍

 まずはおさらいしたい。男女格差を測る国際比較データとして有名なのが、世界経済フォーラムが毎年公表する「ジェンダーギャップ指数」ランキングだ。日本は継続的に低いランクにあり、2021年は総合ランキング156カ国中120位。識字率、初等教育就学率などは他の多くの国と同様に上位だが、国会議員の女性比率(140位)と管理職に女性が占める比率(139位)が際立って低くなっている。経済協力開発機構(OECD)のデータでも、国会議員の女性比率は38カ国中最下位だ=グラフ1。

 「なぜ日本の女性は『公的』な立場から排除され、仕事の世界で男性と同じように責任のある役割を担うことが難しくなっているのでしょうか? このことと表裏一体の現象が、男性の『私的』な場、特に家庭での活躍度合いの低さです」。そう言って本田さんが示したのが、OECDの次のデータだ。1日あたりの「無償労働」(家事、育児、介護など収入に結びつかない労働)時間の国際比較だ=グラフ2。

福祉労働の押し付けが「美風」?

 どの国も女性が男性より長いが、日本の男性の無償労働時間は1日41分。データのある30カ国中最少で、上位のデンマークやオーストラリアなどと比べるとわずか4分の1だ。

 また、日本の男性の仕事時間は、先進国の中では非常に長いというデータもある。つまり、日本ではいまだに「男性(父親)は仕事、女性(母親)は家事育児」という性別役割分業が強く残っているのが、大きな特徴になっている。

 「無償労働は家事育児だけではなく、高齢者や、障害者などへのケアも含まれます。しかし、こうした人への生活保障やケアは、福祉国家であれば公的制度が担うべきものです。日本型福祉社会は、これらの責任を家族、特に女性に押し付け、さらには日本の『美風』として称賛してきたのです」

 確かにそうかもしれない。高度経済成長期は「男性は外で働き、女性は家を守る。子どもは2人」が標準世帯とされていた。しかしそれで社会はうまく回り、家族も幸せに暮らしてきたはずではないか?

「家族の一体感」はあるの…

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