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東日本大震震災が起き、東北の支援活動を始めた直後だった。愛想笑いもしないし、無駄口も一切ない。重たそうな南部鉄器のフライパンを軽々と使いこなす。ちょっと近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。「何か気にさわることでも言ったかなぁ」と不安になったくらいだ。
その人は、震災当時は岩手県奥州市、今は田野畑村にあるフランス料理のレストラン「ロレオール」のオーナー伊藤勝康シェフ。人づてに紹介されたその日に、ロレオール前の広場でチャリティーライブを開き、募金を集めた。
自分の店は大きな被害を受けなかったからと、伊藤シェフは次から次へと動く。津波で妻も店も亡くした仲間のために、東京・銀座にある友人の店から古い皿、ナイフやフォークなどをもらい、店の再開を手伝った。海の環境の変化でホタテの生育状況が芳しくないと聞けば、北海道から稚貝を取り寄せた。私は誘われれば伊藤シェフに付いていって、歌を届けた。困った人たちのためなら寝る間も惜しんで何でもするような熱い心を持つ伊藤…
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