「私が母を死なせた」17歳、ひとり抱えて 震災の傷、周囲の無念
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東日本大震災で母と妹を失った17歳の少女が昨年1月、自ら命を絶った。「あの日、私がいつもの通学路で帰っていれば、お母さんが死ぬことはなかった」。そんな後悔を抱えながら。取材を進めると、震災をきっかけに過酷な家庭環境に置かれ、苦悩していた姿が見えてきた。心の痛みを静かに隠し、ひとり思い悩んだ少女。家族や学校関係者は「どうすれば救えたのだろうか」と悔やむ。何年が過ぎようとも、震災は癒えることのない傷痕を残している。
「誰にも言ったことがない」
少女は、宮城県内の高校に通っていた彩音さん(仮名)。2021年1月16日の朝、自室で亡くなっているのを発見された。5日前に誕生日を迎えたばかりだった。
震災当時、彩音さんは小学1年生で、同県石巻市で母と母の同居相手、1学年上の兄、2歳の妹の5人で暮らしていた。母のおなかの中にはもう1人の妹がいた。
地震が起きた時は下校の時間帯だった。彩音さんは内陸側の学校から海側の自宅に帰ったが、近所の住民に「ここは危ない」と声をかけられ、学校に引き返した。
逆に母と妹は、彩音さんと兄を迎えに行こうと海側の自宅から内陸側の学校に向かった。兄と合流できたものの彩音さんとは会えず、再び自宅に戻ると、家の中は家具が散乱し、彩音さんのランドセルがあった。「下敷きになっているのでは」と彩音さんを捜していた時、津波が襲ってきたという。母と妹は亡くなり、兄は近くの工場に流れ着いて助かった。
彩音さんは震災から数年たったある冬の日、学校の関係者に「誰にも言ったことがない」と伝えたうえで「私が…
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