ロシア文学者を「絶望」させたプーチン氏の「最後の夢」

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マクロン仏大統領との会談後の共同記者会見でのプーチン露大統領=モスクワで2022年2月7日、AP
マクロン仏大統領との会談後の共同記者会見でのプーチン露大統領=モスクワで2022年2月7日、AP

 ロシアの文豪ドストエフスキーの研究で名高い名古屋外国語大学の亀山郁夫学長が、ウクライナ侵攻をどう見ているのか気になっていた。思い切って質問してみると、生気のない声で「絶望」という言葉が返ってきた。どういうことなのか。聞けば聞くほど、深い話になっていった。前編と後編に分けて伝えたい。【大野友嘉子/デジタル報道センター】

 亀山氏はドストエフスキーの小説「カラマーゾフの兄弟」を2006年に新訳し、海外の古典文学としては異例のベストセラーになったことで知られる。14年にはゴルバチョフ元ソ連大統領と会談し、ドストエフスキーが生きた帝政末期のロシアの歴史、習俗、文化に精通するだけでなく、ソ連の時代から現代にかけても詳しいロシアの生き字引のような人である。

ドストエフスキーの問い

 ――ロシアのウクライナ侵攻の一報に、何を思いましたか。

 ◆ロシア文学者をやめようと考えた2014年の一連の出来事です。

 2月のソチ五輪閉幕とマイダン革命(親露的なヤヌコビッチ政権を打倒した市民の抗議活動)の勃発、そしてマレーシア機撃墜事件にいたる半年間の出来事が、まざまざとよみがえってきました。

 今回の戦争から受けている衝撃をひと言で、と求められても言葉が出てきません。強いていえば、ドストエフスキーの小説「カラマーゾフの兄弟」に出てくる、「神がなければ、すべては許される」という言葉でしょうか。

 この小説は、…

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