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ウクライナ侵攻

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年。長期化する戦闘、大きく変化した国際社会の行方は……。

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プーチンを選んだ国民が悪いのか ロシア文学者が憂うウクライナ侵攻

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ロシア文学者で「ゲンロン」代表の上田洋子さん=ゲンロン提供
ロシア文学者で「ゲンロン」代表の上田洋子さん=ゲンロン提供

 ロシア文学者で出版社「ゲンロン」代表の上田洋子さん(48)=東京都品川区=は、やるせなさを隠せない。1994年以来ほぼ毎年ロシアを訪れ、文学や演劇を通して社会の変化をつぶさに見てきた。同時にウクライナのチェルノブイリも、戦跡や災害被災地などを訪問する「ダークツーリズム」のコーディネーターとして何度も訪れ、「故郷」とも感じていた地。戦争の行方が見通せない今、両国に関わってきた文学者として一つの覚悟を決めた。【聞き手・萱原健一】

まさかの原発制圧

 ――チェルノブイリ原発が、まさか武力制圧という形で世界に再び注目されるとは思いも寄りませんでした。

 ◆ロシア軍がウクライナに侵攻する1週間ほど前、ベラルーシ側からプリピャチ川に浮橋を架けて軍事演習している様子が衛星写真で確認されていました。国境のすぐ近くで、ベラルーシのチェルノブイリ・ゾーン(立ち入り制限区域)内でのことです。当然、国境の先はウクライナ側のゾーン。その時、私は「威嚇」だと思い、まさか本当に侵攻してくるとは思いませんでした。

 私がチェルノブイリを訪れたのは2013~19年に5回のツアーを含め計8回。ツアーの通訳だけでなく、コーディネートもやっていたので、原発事故後に廃虚となったプリピャチで町の保存に取り組むNGOの主宰者アレクサンドル・シロタさんとは毎回会ってお世話になっていたんです。シロタさんと同じように現地のガイドをしている人がロシア軍侵攻の直前にフェイスブックで「ゾーンはしばらく閉鎖する」と告知しているのを見つけて、シロタさんにも確認しました。

 ――シロタさんとは今も連絡をとれているのですね?

 ◆はい。開戦直前、シロタさんは「まず家族だけ避難させる」と言っていましたが、結局自分も一緒にウクライナ西部に避難したようです。チェルノブイリは…

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【ウクライナ侵攻】

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