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ドナルド・キーンが描いた日本――生誕100年に

源氏物語をはじめ日本の文学や文化の魅力を世界に紹介した故ドナルド・キーンさん。生誕100年を機に、膨大な英語の著作から、その言葉の意味を考えます

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ドナルド・キーンが描いた日本――生誕100年に

/1 9歳のキーン少年、世界に開眼した欧州旅行

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東京都北区西ケ原の自宅で取材に応じるドナルド・キーンさん。部屋は今もそのまま、遺族が使い続けている=2006年12月15日、兵藤公治撮影
東京都北区西ケ原の自宅で取材に応じるドナルド・キーンさん。部屋は今もそのまま、遺族が使い続けている=2006年12月15日、兵藤公治撮影

 3年前の2月24日、巨星が落ちた。日本文学者のドナルド・キーンさん(1922年生まれ)だ。18歳の時に「The Tale of Genji(源氏物語)」と出会い、96歳で亡くなるまで、日本の文学や文化の魅力を伝えることに没頭し、膨大な研究成果を発表し続けた人だ。その著作・特集本は、自身が執筆したものを中心に英語が50冊以上、他人による聞き書きや翻訳、対談など、日本語も150冊以上に及ぶ。

 生誕100年に当たる今年、各地でその偉業を顕彰し、未来へと語り継ぐ企画展やイベントが予定されている。洗練された一流の英語で「日本」を世界に紹介してくれた「大恩人」はどんな時代を生き、私たちに何を伝え、未来に何を残そうとしたのか。本人の英文や、4月に創刊100年を迎える英字「The Mainichi」の紙面とともに、この1世紀の時空を旅してみたい。

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 キーンさんは1922年6月18日、米ニューヨーク市のブルックリン地区で生まれた。父は貿易商。母と2歳年下の妹との4人暮らしで、さらに愛犬ビンゴがいた。東京都北区西ケ原にある自宅近くの墓には、黄色い犬(黄犬=キーン)のイラストが刻まれているが、これはビンゴをイメージしたデザインだ。

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