アサリ産地偽装、その手口とは 業界の慣習悪用の実態

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2019年にアサリの産地偽装で行政指導を受けた水産卸販売会社が事業所としていたアパートの一室=佐賀県小城市で2022年3月15日午後4時58分、蓬田正志撮影
2019年にアサリの産地偽装で行政指導を受けた水産卸販売会社が事業所としていたアパートの一室=佐賀県小城市で2022年3月15日午後4時58分、蓬田正志撮影

 中国や韓国から輸入されたアサリが「熊本県産」として大量に出回っていた問題で、かつて産地偽装に関わった関係者などの話から手口の一端が明らかになってきた。流通業では一般的な商慣習「帳合(ちょうあい)取引」の仕組みが悪用されていた実態が浮かび上がる。

 数年前まで産地偽装をしていた水産業者の男性は、中国や韓国から輸入して船便で山口県下関市の下関港に着いたアサリを一時的に熊本県内の浜に仮置き(蓄養)し、仲卸業者に卸していた。しかし、書類上は輸入→蓄養→卸しの流通段階で何重にもダミー会社を介在させ、自分たちが偽装に関わった記録を残すことなく中国産や韓国産のアサリを「熊本県産」として販売していたという。

 流通過程で介在した業者が書類だけをやり取りする取引は「帳合取引」と呼ばれ、一般的な商形態だ。通常、メーカーや生産者から小売店に商品を流通させる場合も卸・仲卸業者などが間に入って帳合取引を行う。こうした中間業者が担うのは主にメーカー・生産者と小売店の間の需給調整で、実際に商品を動かす必要はないためだ。

 男性の水産会社は、実際は自らアサリを輸入し、熊本県内の浜に一時仮置きして仲卸業者に卸していたにもかかわらず、…

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